お昼も終わり、眠たくなってくる午後の授業たち。
そんな感じに5限をなんとか乗りきって、あと6限目を頑張るだけ!
なのに、まさかの移動教室とはついてない。
「沢渡!」
「え、はい」
その声は気持ちに気付いたばかりである不動くん。
「今日の放課後、言いたいことあるから残っとけよ」
「不動くん部活は?」
「……別に」
「駄目だよ。部活終わるの待ってるよ?」
そう言って笑ってみせて平然を装ったつもりだけど大丈夫かな…?
不動くんは黙って頷いて去っていった。
ん、言いたいことってなんだろ?
放課後に残れだなんて言われたら
妙に期待してしまう…
でも、まぁ…不動くんは私のこと罵りしかしないもん。
そんな淡い期待は皆無、かな。
───────
「あ、お疲れさま!」
「ああ」
急いで来てくれたのかな、着替えてきたであろう制服は少し崩れていた。
「あの、話って…?」
なんだか意識しちゃって顔がまともに見れない。
「…お前が何に悩んでんのか分かったから、それで」
「あ…」
「悪かったな。あんな手荒な事して」
「う、ううん大丈夫だよ!だって不動くんは心配…してくれたんだよ、ね?」
「……つれぇことあったら、俺に言えよ。泣きたいなら泣けばいいし、よ」
「不動くん…うん!」
「…………そんだけ」
「え、あ…」
そっか、それだけか……
そんな都合いいことなんてあるわけないのに、やっぱり私、期待しちゃってたのかな…
あわよくばって、期待ばっかりしてる。
でも怖くて何もしないで
自分から、なんて考えたこともなかった。
けど
私が、自分で頑張らないと
弱虫のままだから…!
「あ、あの!」
「ん?」
「わ、た…ふ…ふど、うくん…」
あわわわわわわ
緊張なのか上手く喋れない…
不動くんはきょとんと訳がわからなそうで、微妙に首を右に傾けた。
「そ、の……すっ…好きって、 言ったら……こ、困るよね…?」
ああ 心臓が飛び出そうだよ…
────────
「そ、の……すっ…好きって、 言ったら……こ、困るよね…?」
もじもじと口ごもった沢渡から
思ってもいなかった言葉が微弱ながら放たれた。
「沢渡…?」
「あっ…や、その!」
沢渡は俯いて必死になって言葉を繋げた。
「…不動くんといると楽しい。
何て言うか、安心するっていうか…多分、こういう感情が恋、なのかな?」
「いや聞くな」
「あはは……だよね…」
そう言って笑う沢渡が、どうしようもなく愛しくて俺は思わず抱き締めた。
「ふぇっ…!?」
「バーカ…んだよ。おまえ鬼道じゃねーのかよ…」
「ふ、ふど…」
「黙ってろ」
「………うん」
ああ、もう勝手なんだよお前。
泣いたり笑ったり忙しいやつ、鬼道が好きだとか白石がどうとか
本当に馬鹿だよな……おれ。
まじダセェじゃんかよ…
「なぁ沢渡…」
「は、はい…」
「迷惑とか思ってねえよ」
「不動くん…?」
「……お前が思ってる以上に、惚れてんだぜ?」
不器用なくせに沢渡は泣きながら笑おうとするから、その顔に思わず微笑みが出た。
恋は駆け引きって言うけど、俺達には必要ないみたいだな。
いつだって愛していた
(く、苦しいよ…不動くん、)
(……女ってやわらけーよな)
(不動くん!?)
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