あー…くそ、苛つきが収まらない。
これもあの馬鹿のせいだ。
何の理由も分からずここ1週間ずっと俺を避けやがって。
と言うか…
自分が思ってたより沢渡にベタ惚れしてるらしい。
「ハァ……」
「お前が酷な顔をしているとは、明日は雨でも降るんじゃないのか?」
「まさか喧嘩売ってんのか佐久間クンよぉ」
「馬鹿言うな。俺がお前なんかにわざわざ喧嘩売るか。」
珍しく朝練に顔出しをして、軽い練習を終え、これまた珍しく佐久間と教室に向かっていた。
まぁ…同じクラスだし不思議なことじゃないが、何が悲しくて野郎と二人で登校なんだよ。
さっきの佐久間の台詞、多少言い方が気に触るがそこはあえてスルーでいく。
「なんだよ、何か言いたい事でもあんのか?」
「ああ。おまえと沢渡は喧嘩でもしたのか?最近話してるのをみないが」
「…知らねー」
「ちょうど1週間前の昼休みに沢渡が泣いてるのを見掛けたから、てっきりお前が絡んでるのかと思った」
……は?泣いてた?
1週間前は確か、朝にちょっかい出しただけで昼休みにも会ってない。
つまりは昼休みになんかあったってこどだろ、
なんだよ、俺が避けられてる原因がそれなら関係ある話になってくる。
そんな時、運よくちょうど沢渡が登校してきた。
沢渡と目が会えば、目を反らされた。
「おはよう佐久間くん」
「ああ、おはよう」
「不動くん…おは、よ…」
一切目を合わさず、沢渡は俺の横を通って行った。
それが余計に苛つかせる。
ここが廊下だということ、他の生徒もいるといことなんて関係なしに沢渡の腕を掴み無理やり引っ張った。
向かうは使われてない空き教室。
「痛っ…ふど、くん!やだッ…離して…」
「黙ってろ」
目的の場所につけば案の定鍵は掛かってなかった。
掴んでいた腕を離し荒々しく床に沢渡を投げつけた。
「いたッ………ふ、ふどう…くん?」
俺を見る沢渡は怯えているのか、声が震えていた。
「なぁ…お前なんで俺無視してんだよ」
「それは…」
「……どいつに言われたんだよ」
「え…?」
「馬鹿のお前をそこまで悩ませてんのは誰かって聞いてんだ」
「な、悩んでなんて…大丈夫、大丈夫だからっ」
そう言って、沢渡はいつもみたいにへらっと笑う。
なんで、どうしてだ。
どうしてこいつは…
「…ムカつくんだよ、いつもへらへら笑ってやり過ごすつもりかよ!」
「へらへらだなんて…私本当に大丈夫だから!」
「だったら、だったらなんで今にも泣きそうな顔してんだよ馬鹿が」
それだけ言って、おれは教室を出た。
本当はもっと責めるつもりだった、もっと問い出すつもりだった。
あいつがあんな顔するから…
「待って!」
後にした教室から沢渡とは思えない大声が聞こえた。
振り替えれば泣きそうだった顔はすっかりと涙を流していた。
「ごめ、んなさい…今は心の整理とかつかなくて、言えないけど……その…不動くんの事、考えてたんだよっ…!!」
言葉一つ一つを何とか繋ぎ叫ぶように最後の言葉を言えば、顔を真っ赤にして俺の横を走り抜けていった。
「なんだよ、それ…」
その言葉にどんな意味が込められてるなんて俺には分からない、けど、自惚れしつしまいそうな感覚。
でも、あくまで感覚なだけ、
自分にそう言い聞かせる。
あいつが鬼道を好きなのはわかってんだ、俺だって下手に関係を崩すの怖い。
「俺も弱くなったな…」
君の言葉に夢を見る
(にしても、最低な真似したな…空き教室に連れ込むとか…)
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