弱虫と不動くん | ナノ




 
 
 
 
「不動くん!」



今朝の出来事から数時間がたった昼休み。


鬼道くんと仲直りが出来たのはいいけれど、なんだか腑に落ちない…。



その原因でもある不動くんを探し普段は来ない屋上にやってきた。



不動くんは案の定そこにいて
寝そべっていた。





「んだよ、うっせーな」



「な、何で…あんな、あんなこと!」


「顔真っ赤にして言ったってって迫力に欠けるぜ?」


「うぅ…だ、だって!」




よくわからない会話の中でも
不動くんは寝そべって空を見ていた。

……不動くんは必要以上に語ろうとはしない、だからよく分からないけど…彼はきっと私の為にあんな嘘をわざわざついてくれたに違いない。



そう思うと、鬼道くんの時には
出来なかったことがすぐに出来た。



「あ、ありがと不動くん!」


「なんだよ急に気色悪いな…」


「だって不動くん、ちょっと内容は変だけど嘘ついてくれたもん」



だから、と私が言葉を続けようとすると、不動くんは1人でに笑いだした。





「ハハハハ!ハハ…お前最高だな、単純というか馬鹿と言うか」


「え?ちょ、不動くん?」


「俺はな、鬼道の口から生理なんて言葉聞いたらお前が真っ赤になって恥ずかしがると思って、わざと言ったんだよ」


「はい…?え、ちょっと不動くん!?」


「それそれ、その赤面した顔は見ものだぜ」


「やっ…み、見ちゃ駄目!」


「なんだよ誘ってんのそれ?」


「ち、違っ…ふ…不動くん?」




寝そべっていた不動くんは体を起き上がらせ一歩一歩と私に近づいてくる。

その足の動きと同じように私は一歩ずつ後ろに下がる。


背中にはフェンス、前には不動くん。

これは何のシチュエーション!?




不動くんの手が私の頬に触れて

少し怖い整った顔が徐々に近づいてくる…




「ふ、不動く…やめっ…!」


「沢渡…」




もう駄目!
顔が近付くギリギリのとこまで不動くんの顔が来ている。







「ばーか」


「……………へ?」


「まさか、キスでもすると思ったのか?唯子ちゃんは大胆ですねー」


「なっ…な……えぇ…!?」



私はあまりの出来事に思わず腰を抜かしてしまい、ペタンとその場に座り込んだ。





「ふ、不動くんの馬鹿ぁ!!」


「満更でもないってくらいに顔赤いぜ?」


「ち、違うもん!」


「クク…お前といると本当に退屈しねぇわ」


「褒められてる気がしない…けど…不動くんの前だと自然体になれる」


少々恥ずかしくて、ほんのりの頬が熱くなるのを感じて私は笑って誤魔化そうとした。



「…この無自覚っ……」


「ふぇっ!?」



小さくて聞こえなかったけど
不動くんは何かを呟くと、私を後ろから抱き締めた。



「ふ、不動くん…」


力任せなんかじゃなく、優しくて何故だか拒む事が出来なかった。




「唯子…」


「ふゎ…ちょ、耳元で…」


耳元で喋られ、擽ったい気持ちより



「ちょ、不動くん!」



他人が見ると誤解?をされそうなこの状況、うんともすんとも言わせない雰囲気。



と思ったのに…


グゥ…と私のお腹は鳴った。


そういえば今は昼休みで、ご食べないで不動を探していた。




「あ、えと、これはその!」


「ったくお前は空気とか読めなすぎだろ」


「空気…?」


「ハァ……」


不動くんから大きなため息が漏れた。




少し強面な不動くんだけど話すと意外と変わった人なだけで怖くはない。



なんとなくだけど…
落ち着ける、ってこんな感覚なのかもしれない!




だからこそ、今ここで黙って泣きたい。バイバイした気持ちと本当にバイバイする為にも。


黙って聞いていて欲しい。



でも、そんなことは流石に出来っこない。私は弱虫だから。




この、このドキドキする気持ちは
一体なんなのかな…?





伝えたら困らせてしまうだろうか、なんて




(不動くんと居ると今までと世界がみたい)





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