弱虫と不動くん | ナノ




 
 
 
 
「ハァ……私、本当に馬鹿だな…」


あの後、私は昼休みが終わるまでトイレの個室に閉じ籠り、熱い目頭を必死に落ち着かせていた。


教室に帰ってからも鬼道くんと目が会わせられなく放課後になり、そのまま帰宅。




急に居なくなったりしたら鬼道くんに迷惑かけちゃったよね。

それとも…私なんてどうでもいいかな?





「ハァ……」


「おい、朝からため息ばっか吐いてんなっつの胸糞悪いんだよ」


「あ、不動くん…おはよー…」



不動明王くん。

中学2年の時に転校してきて
なんやかんやで私にちょっかいを出してくる、ちょっぴり意地悪な人です。



因みに今私は下駄箱にいます。




「不動くん…私ってどうして要領が悪いんだろ……」


「馬鹿だからだろ」


「ひ、酷い!」


わかってる!
確かに私は馬鹿だけどそこまでストレートに言わなくても。





「まぁ…お前がお人好し過ぎんのもあんじゃね?」


「お人好しかな?」「馬鹿なくらいな」


「ま、また馬鹿って…!」



そういえば、不動くんとこうして話すのも久しぶりかもしれない。


なんだか新鮮。



下駄箱で雑談をしていると、
私が一番会いたくない人物
鬼道くんが登校してきた。




「よぉ鬼道クンよ」


「不動…お前はいい加減に朝練に出ろ!いいな」



鬼道くんは私の方は一度も見ず
不動くんに注意をするとさっさと行ってしまった。



言わなきゃ、謝らなきゃ。

でも……やっぱり勇気が出ない





「あ、きど…「鬼道くん!」


頑張って出した声も誰かによってかき消されてしまった。



鬼道くんを呼んだその声は、私でもなく不動くんでもなく鬼道くんの想い人。





「おはよ!今日も朝練だよね?サッカー部は大変だねぇ」


「おはよう。サッカーは好きだから苦にはならない」


「アハハ。鬼道くんらしいね!じゃ、またねー」



可愛らしい声、去っていく後ろ姿だけでも見惚れてしまいそう。


チラッと鬼道くんを見ると彼女の後ろ姿から目を離さず、ずっと見ていた。





「……っ…」


「なに、お前もしかして鬼道クンの事…」


「ちっ…違う、よ」


「…だったら何だよ、その顔」


「違う…違うよ……だって…」



昨日と同じ。目頭が熱い。


駄目、こんなとこで泣く馬鹿なんていない。

いまだって…不動くんに迷惑かけてっ……!!





「チッ…おら、行くぞ」


「えっ…行くって?」




不動くんは先程履き替えた上履きを再度、ローファーに履き替えた



「決まってんだろ、サボるんだよ」


「さ、サボる!?」


「チンタラしてっと置いてくぞー」


「えっ、え?…ま、待ってよ不動くん!!」


急いで靴に履き替え不動くんの後を追った。














「どうしよう…サボりだなんて生まれて初めて……き、緊張してきたっ…」


「フッ…馬鹿丸出しだなお前」


「ば、馬鹿じゃないもん!……ねぇ不動くん、なんでサボるなんて言ったの?」


「あ?俺はしょっちゅうサボってんぜ」


「違くて…なんで私も?」




不動くんは一度私から目線を外し、深くため息をついた。


え、なに、私そんなため息つかれるような事を言っちゃったかな…?




「お前が、お前が泣きそうな顔するからだろ」


「え…」


「ほら行くぞ」





ぶっきらぼうに言い放つ言葉
でも、さっきとは違くて
今は私に歩幅をあわせて歩いてくれている


何だか自然と落ち着けた。






その視線の先に、気付きたく、ない




(不動くん、良い人!)
(俺だって気付きたくなかった、お前の視線に、だから)





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