4限は確か世界史。
子守唄のような眠くなるだけの授業をサボって屋上へと来ていた。
フェンスに寄りかかって下を見れば、帝国っぽくないなんとも普通のグランドが見える。
「不動くん!」
「……何か用か?」
昨日の件から沢渡が何故にあんな事を言ったのか考えていれば、甘ったるほどの高い声が聞こえた。
「ええ」
声の主は白石優実だ。
「最近沢渡さんと仲悪いの?」
「お前には関係ねぇ」
「否定しないんだね」
「……何が言いたい」
軽く睨んでやるが、それは無意味で、白石は微笑んだ。
ドアの側に立っていた白石は
一歩一歩と俺に近づく。
「簡単なことよ?私ね、不動くんが好きなの、付き合ってくれるよね?」
「頭沸いてんのかテメェ」
「ふふ、本気よ」
表情を変えることがない。
白石は俺を真っ直ぐに見つめてくる。
「はん、生憎お前みたいな猫被ってる奴に興味はねぇんだよ」
¨猫被ってる¨
その言葉に反応したのか白石は
一瞬、一瞬だけ表情を崩した。
「なーんだ。不動くんにはバレちゃうのね」
「とっくにな」
「だからと言って気持ちは嘘じゃないわよ」
「もう答えたろ、失せろ」
もの凄く胃がムカムカするのが分かる。
その原因は白石だって事は明確で、屋上から出ていこうと立ち上がった。
「待って」
「ウゼェ、離せ」
「そんな反応だけじゃつまんないわ。沢渡さんみたく動揺してくれたらよかったのに」
「あいつは関係ないだろ」
「大有りよ?私が不動くんの事好きって言ったら今にも泣きそうだったんだから」
楽しそうに話す白石。
こいつは何を言ってるんだ?
まるで人の不幸を楽しむかのように満面の笑みで、
「てっきり沢渡さんって不動くんの事好きなのかと思ってたのよねー」
「…あいつは」
「知ってる、鬼道くんでしょ?」
¨私は嫌いだけどねー¨とケタケタと笑いながら続けた。
「おい、それ…」
「もう分かるわよね?」
…気づくに決まってんだろ。
沢渡は鬼道が好きで、でも鬼道が白石を好きなのを理解していて鬼道の相談に乗っている、まさかその相手である白石が鬼道が嫌いだと知れば……
良心の塊のようなあいつが悩むのも理解できる。
「知ってて言ったな」
「ええ、それに、不動くんって沢渡さんが好きなんでしょー?何この四角関係、みたいな!…不動くんが気持ち伝えたら余計に困惑しちゃうでしょうね」
そうだ、白石の言う通り、俺が沢渡に告るようなことがあれば、沢渡は間違いなく今以上に悩んで壊れてしまうんじゃないだろうか…
鬼道が好きな沢渡
白石が好きな鬼道
…俺が好きな白石
沢渡が好きな俺
……こんな漫画みたいな展開があるもんなんだな
あいつはずっとこの事を悩んでいたのか…。
俺の気持ちなんて知る筈はないが、あいつにとって十分な重り。
4限の終わりを知らせるチャイム
が鳴るのが聞こえる。
「…って不動くん!?」
俺は走った。
俺の気持ちに気付いてしまった沢渡の表情が脳裏をよぎった。
そんなヘマはしない、する筈がない!!!
なのに、どうしてか、その表情が頭から離れない。
君を好きでごめん
(どうして、こうなったしまったんだ)
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あきお難しい/(^д^)\
次回はヒロインちゃん視点に
戻ります!!!!
あとちょっとで完結させたいな
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