ろまんちすと
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 誰か助けてくれたらいいのに。


 俺今何してんだよ、いや普通に屋敷でアルバイトみたいに執事やってるだけだわ。何の変わりもなく「承りました」なんて言って、執事みたいに。いや、俺執事だし。そこそこ有名のエドガーさんだし。でも、考えればつまらない。あのお坊ちゃんが連れ出してくれたらさぞ面白いだろう。つまらないことを考えてつまらないことをやってる俺の方が、かなりつまらない。


 誰か助けてくれたらいいのに。


 出かけている時だって、あのお坊ちゃんの顔を探してまあいるわけないのは知っている。知っているけれども、ふと見た瞬間にいたりしたらどんなに嬉しいのかと思って。ちょっと期待して探してみる。やっぱりいない。落胆。ばかばかしいことをやっている俺の方が、かなりばかばかしい。


 誰か助けてくれたらいいのに。


 そして案外何でもない時に会ったりして、何でもない時だからこそ、普通にしていられる。こういう時は胸はときめかず、好き!ってほどでもなく、あいつがいる、程度でしかないのだ。感情にも波があるのは誰でもわかるだろ。


「ようティッキーくん」
「俺の名前はティッキーくんじゃないんだよね兄さん」
「カリカリすんなよティキ坊」
「俺はもう子供じゃないつもりなんだけど兄さん」


 こんなばかばかしい会話をするもの久しぶりだった、こちらは執事の仕事で忙しく、向こうは貴族で騎士団で当然忙しい、忙しくないわけがない。出先で会えば本物の兄弟のように会話をして、なんとなく「じゃあまた」みたいな空気になって、去っていく。それ以外で別に連絡を取り合ったりせず、ふわふわ曖昧の関係。こんな曖昧だからこそ、今まで仲良くして行けたのかもしれないが、やっぱり俺としてはちょっと刺激が足りないと思う。


 ばかばかしくてあほらしいことを考えて早二ヶ月。
 誰か助けてくれたらいいのに。


「ええいめんどくさい! なんだよティキ」
「なんかいつもの顔じゃないな、と思って。筋トレしてないんじゃないの?」
「おめえと一緒にすんなこの体力バカ」


 じゃあなんなのさ、と俯いて考え出すティキ。いつもと顔が違う原因を、俺は知っているようで知ってない。筋トレは確かにしてない。けれどいつものことだから関係ないだろう。そうしたら、やっぱり目下の悩みごとのせいか。ティキともっと親密な関係(今でも親密だけどその一歩先と言うべき?)になりたいとか、ティキとマメに連絡取りたい(月一で一緒に出かけるとか?)とか。あ、やべえ波がキタ。今めっちゃティキが好きだ。どう言ったらいいのか分からず俺はしかめ面をしていると、あっと気付いたようにティキが顔をあげた。


「もしかして悩み事でもあるの? 珍しいね、俺でよければ聞くけど」


 誰か助けてくれたらいいのに。
 なんて、願っていたら叶わない。


 今こそ自分で動くべき?


 ハテナマークなんてつけてはいられない、今こそ自分で動くんだ。
 俺の感情ほら、波すげえから、今言っとかないと後悔するから。うん、今いうべきだよね。今言っとかないとあといつになるか分かんねえし、次は言えないかもしれないだろ。たくさんの言い訳を並べて。
 

 気付かなかったら容赦しねえぞ。こんなおっさんを乙女にしやがって、責任とれよな。とらねえとぶっ殺すぞ。


「いや、実はな――俺はどうやらお前が好きらしい
「……マジで?」
「マジもなにもくそもあるかバカ」


 さあ悩めよ少年。















 
 五分五分企画のわが息子エドガー・ランペイジと霜田さんちのティキ=ランカスターで書かせていただきました。
 文才がこいってかんじですが、ほんとう、楽しかったです! また書きたいなあ。霜田さん、もらってってくださいな。




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