わからなくてもいい
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 ねえ、もう、終わりにしよう? 


 言われたのは、すでに暗くなり始めている、午後四時くらいだったと、思う。
 なんで? とは聞けなかった。だって、分かりきっていた。


 ドタキャンと、遅刻を繰り返して、謝ったら許してくれる、相手に甘えすぎていて。
 実は許してるわけじゃないんだろ? だって、そんなの、あたりまえ。
 あたりまえというあたりまえが分からないけど、普通は、怒るだろ?


 ぎゃんぎゃん喧嘩するんならよかった。でも、怒らないから、いつも、いいよ、って笑う。
 その笑顔に、俺は騙されて。甘えて。いつも泣きそうな笑顔になっていたことに、今更、気づいた。



「気付くのが、遅かったかな。気付くのがもう少し、早ければ、俺は」


 って言ったけれど、


「そういうんじゃ、ないよ」

 
 って答えた。そういうのじゃないって、どういうこと? 
 と思ったけれど、別れるんだから変わらないだろ、って思った。


 言い表せないくらい好きなのも、けれど、忙しくて困らせていることも。
 会う回数も少なくて、電話も。唯一してたのがメールだってことも。
 俺、最悪だな、最低な男だな、って思ったことも。  


 今更すぎて、ぜんぶ。


 なあ、お前、どう思ってるの? そういうのじゃないのに、なんで別れようって言ったの?
 って、やっぱり、聞くことができなくて。臆病だってことも、今更、気づいたんだ。



 知りたいけど、知りたくない。だから、わからなくてもいい。
 わからなくていいよ。もう。だって、今更遅すぎるんだ。なにもかも。






 わからなくてもいい
 ( 臆病な、諦めるあなたが、わたしは嫌いなのよ )



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