白磁の頬、弾けた真珠

 梵天のことは、大好きだった。けれど、信じることが出来ない。矛盾してる? そんなの、知ってる。
 嫌だ、嫌だと言っているのにそれとは裏腹の、体。止めて欲しいのに、止めて欲しくないと言う心。
 抱いて欲しくないのに、もっと抱いてと悲鳴を上げる躯。
 
 望んでいるわけじゃ、ないのに。



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「露草、」
 
 ふと梵天は、俺の名前を呼ぶ。もぞもぞと布団から出て、嫌そうに顔をしかめた。梵天は、そんな俺を見て首を傾げる。
 俺の名前。呼ぶなよ。そんな、傷ついてずたぼろになって、今にも泣きだしそうな顔しながら。
 そっと俺の頬を、今にも壊れそうなガラス細工のように触れる。気持ち悪い、触るな。

「露草、」

 もう一度、梵天は名前を呼ぶ。――五月蠅い、呼ぶな。俺の名前を呼ぶな。
 嗚呼、五月蠅い! 気持ち悪いよ、五月蠅い。お前は、俺のことなんて好きじゃないんだろ。
 他の奴が好きなんだろ。思えば思うほど、憎く恨めしくなって来る。


 不意に、梵天の唇が露草の唇に触れる。止めろ。そう叫びたいのに叫ぶことが出来ない。
 沈む意識。その中で露草は、一筋の涙を零した。







 信じたくても信じられない露草のジレンマ。








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