少しだけとおまわり



 この道を、後何回センパイと歩けるんだろう。
 考えたところで何が変わるわけでもない。変わろうと思っているわけでもない。
 けれど無性に寂しくなって、少しでも一緒にいれるように、って。
 
 さりげなく握った右手。センパイは何も言わずにただ強く握り返した。


「、黄瀬」
「ねえ、笠松さん」

 何かを言おうとしたセンパイを遮って。


「あン?」
「コッチ、近道なんスよ。こっち通りません?」
「そんな話聞いたことない」

 むしろ遠回りなんすスよ、実は。なんてことは言えない。
 バレてもセンパイと一緒にいたかったから、言えばきっと許してくれるだろう。たぶん。
 今更に伝わるセンパイのあたたかい体温。オレの手は冷たい、けれど。


「オレがこないだ見つけたんス!」
「へえ」

 感心するようにうなずく。許してね、センパイ。
 誰もいない道を歩きながら一人謝った。


「だから、コッチ、通りましょう?」
「ったく仕方ねぇなあ」

 微かに笑うセンパイを見ていると、どうしようもなく悲しい気持ちにさせられた。

 こんなわがままがいつまで、通じますか。
 こんなわがまま言っていて、いいですか。
 センパイが卒業していっても、わがまま通じますか。


「好きっス」
「……そうかよ」


 もう聞き飽きたっての。
 どうせオレが大学入ったって変わらねぇんだろ?



 もちろんです。




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