I need only you
恋はすばらしいもの。
幼かった頃の俺に母はいつもそう言っていた。
政略結婚とは思えないくらい、仲睦まじく父と寄り添う母。
だから俺は恋がしたかった。
誰かのいい一面を見ればそれが愛おしかった。
出会った人の数だけ、俺はコイをした。
一瞬前まで、いつも一生懸命で儚げお前に恋をして、
一瞬後には、芯が強く綺麗なあいつにコイをした。
特別として扱われる俺たちは一人ぼっち。
平等に扱われることなんてない。
でもある日やってきたあいつは綺麗に笑って『友達だろ!』って。
嬉しくて眩しくて、あっという間にコイに堕ちる。
このコイは、同時にお前との別れを示してた。
出会いの数ぶん恋する俺は、その数と同じだけ別れも知ってる。
少し哀しいけど慣れているそれに感慨なんて湧かない。
だけどお前は、別れがたくて離したくなんてないと思ってしまう。
いつもと違う思いが不可思議だったが、俺は目の前のコイに夢中。
気付かなかった、歪に笑って頷くお前にも。
離れがたいと思った、自分の心にも。
お前だけが必要だよ。
言いたかったのは誰にかな?
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