I want to say I love you
大切な人。
僕にそんなものはいなかった。
ひとりきり。
裕福でも、容姿が整っていても、崇められても、誰にもわかってもらえない孤独
寂しくて悲しくて、なにより苛立たしい。
だからそれを周りにぶつけてた。
僕より格下の生徒を見下し、親衛隊を嫌悪する。
それが当たり前。
そんな常識を壊したのがあの子だった。
彼が連れてきた極々平凡な一生徒。
この学園の頂点に立つ僕らには相応しくない。
どうせ僕ら目当てでしょう?
馬鹿だよね、愚かにもそう思ったんだ。
だけどあの子は彼以外の僕らなんて見ていない。
丁寧に挨拶してきたけれど、それは目上の人間で恋人の友人に対してという理由。
案外と大きな瞳に僕らは、僕は一瞬も写っていかった。
誰もが僕を見ているわけじゃない。
どれだけ自意識過剰だったんだと、その夜、自分自身を嘲笑って泣いた。
あの日からあの子に一方的な感謝を捧げた。
伝えれば不思議そうな顔をするんだろうから何も言わない。
心の中で繰り返す、ありがとう。
繰り返して、見つめて。
彼とあの子の幸せそうな顔が傍にあれば、僕までもが嬉しかった。
気づけば僕は君に恋をした
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