Love is War






人の生き死にはないけれど、なかなか熾烈なものだと思うよ?

恋という名の戦争は。









――バチンッ


「いい加減さぁ、会長に近づくの止めてもらえないかな?」


手加減なく、不清潔な身なりの割に白い肌を叩いた。

良心?そんなもの痛まないよ。
だって、自業自得でしょう?

人のものを盗っちゃいけません。

小さい子でも知ってることが、なんで守れないかなぁ?


「…っふ、ざけんな!オマエみたいな親衛隊のせいで、あいつらは孤独なんだ!
どれだけ殴られても、虐められても、オレはあいつらの友達をやめない!!」


反省の色なんて欠片もない、むしろ憎憎しげな目で僕を見てくる。

しかもなに?僕が親衛隊?


「ははっ、笑っちゃうね」

「なっ?!オマエ、生徒会の皆が好きなんだろ!なんであいつらを傷つけることするんだよ?
そんなことしたって、自分だって傷つくだろ?!」


その生徒会サマ方を虜にした純粋無垢なお優しさで僕も救ってあげるって言いたいの?


「傲慢だねぇ。自分勝手な正義感でヒーロー気取り?
平等に優しいオレって偉いでしょ?って褒めてもらいたいだけのガキじゃないか」


本当、勘違いもいいところ。


「ねぇ、そもそもいつ僕が親衛隊だって言ったの」

「え、それは…みんなが言ってて…」

「ふぅん?どうせ、皆なんて言っても会長を除いた生徒会サマくらいでしょ」


僕を親衛隊だなんていうのはそいつらくらいしか思いつかないもの。

会長は言うわけないって断言できる。


「よ、陽輔だって迷惑がってた!」

「は?なんでアンタが会長の名前呼んでるの、セフレの分際で」






今更になるけど、僕が相対してるのは転入生の菅野 海(すがの うみ)
学園に来て早々生徒会サマや人気者を虜にしたらしいけど、今じゃただの会長のセフレの一人。


「オ、オレはセフレなんかじゃない!恋人だ!
名前だって呼んでいいって…っ」


まぁ、本人は恋人だった思い込んでるみたいだけど?

こんな馬鹿に入れ込んでる人の気が知れないね。
ある意味幸せなヤツだけど。


「ほんと、お気楽だね。君が恋人なワケないじゃない」


この学園一と賞される顔(かんばせ)を嘲笑に染める。


「僕が生徒会長の…木戸 陽輔(きど ようすけ)の恋人なんだから」


ああ、そんな愕然とした顔しないでよ。
不細工に磨きがかかるでしょう?

て言っても素顔は可愛いらいしいけど、僕に勝るわけがない。

自惚れと笑ってくれてもいいよ。
でもこれくらいじゃないと陽輔の恋人なんて務まらないからね。


「うそ…、陽輔はいつもオレのこと可愛いって…」

「それだけでしょ?好きとか愛してるなんて言葉言わないでしょう?」

「だ、だって…オレと付き合いだしてからセフレなんていなくなったし!」

「君に分からないようにしてるだけ」


本当に馬鹿。
そんなわけないじゃないか。

陽輔にとって浮気は僕の愛情を量るものだもの。
嫉妬で僕が相手を叩きのめせば、彼は安堵する。愛されていると。

そして僕は勝者になり続ける。
彼には僕以上の存在など在り得ないんだと知らしめるために。

よく言うでしょう?恋は戦争。
戦わずにして得るものなんてない。


「勝てば官軍、負ければ賊軍」

「は、なに言って…」

「勝った僕が恋人、負けた君はただの玩具」


戦う前から勝敗は決まってたけどね。

だって…


「陽輔に愛されている僕が、常に勝者だもの」


僕たちは愛し合ってて、依存してて、狂ってる。


「そうでしょう?陽輔」

「そうだな…刹那(せつな)」


ほら、この腕は僕を抱きしめるためにある。





そんなに泣き崩れないでよ、転入生。

敗者の涙ほど鬱陶しいものなんてないんだから。











狂ってなければ恋(せんそう)なんてできないでしょう?






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