02
どこをどう走って来たのかなんて覚えていない。
式の途中だとか、みんなの驚いた顔なんて気にしていられなかった。
「…っは…はぁ…」
なぜ、なんで、どうして?
荒い息を吐き出しながら、疑問ばかりが頭をよぎる。
別れを切り出したのは中3の半ば、そして今日は高等部の入学式。
つまりまだ半年ほど。
やっと、痛む心が落ち着いてきたのに…。
目の奥が熱い。反対に頬は濡れては冷える。
治りかけてきていたと思っていた傷がじくじくと疼く。
血が固まっていただけ、その内側では膿んでいた。
酷い人、なんて憎らしい人。
けれど何よりも憎いのは俺自身。
傷が膿んでいて喜んでる、ああ、俺はまだあの人を愛しているのだと。
口では忘れたいと言うくせに。
あの人が追いかけてきてくれたのが嬉しい。
あなたが来なければ気付かなかったのに。
「龍之介さん…っ、どうして…!」
ああ、本当に非道い人―――。
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