陳腐な愛の言葉




僕が強いだなんて、どうして思ったの?

いつだって貴方を失う恐怖に怯えていたというのに。


困った顔で赦されるはずがない。

弱さが免罪符になるなんて傲慢。


強い人が傷つかないなんて、どうして思ったの?













「お前は俺がいなくても大丈夫だけど、」


俯いていた視線を遠くへやって、ここにいない彼を想っているんだろう。
愛しげに細められた目。ほんの少し前まで僕のものだったそれ。


「あいつは、俺じゃないとダメなんだ」


なんて使い古された、陳腐な言葉。
今時ドラマでも言いやしないのに。

貴方からすれば僕が赦してくれる魔法の呪文、そして彼への愛の言葉。

そんなはず、ないのにね?


「おまえは強いから、」


だからなんどと罵ってしまいたい。

けれど弱さを強がりでかくしている僕は、
ただ一度、笑顔で頷くだけ。












彼を取り巻く容姿の整った人たち。
ぞれでも僕の目に映るのは無邪気に笑う貴方だけ。



ねぇ、どうして僕から奪っていったの?
あんなにも君だけを想う人たちがいるのに。

なんであの人まで欲しがったの?



彼のどこが弱いんだろう。
我侭で欲しがりで、小さな子供みたいな子。

そしたら貴方は言うんだろうね。
『強がりだ』って。

本当にそうなら、僕の強がりになぜ気付いてくれなかったのかな。















弱さが正しいなら。
僕は最期に見せ付けてあげる。

こんなにも貴方を想って弱くなったこと。

ああ、涙が空気に触れて、冷たい。



ねえ、

貴方の心に、僕は少しでも残れたかな…?










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テーマ「人外ファンタジー」
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