人違いにご注意ください




とある国の国王の私室。

その主である国王と、わりかし小綺麗な少年が近すぎだろってくらい密着していた。


『私の愛しい姫巫女、お前を傷つけるものは許しはしないよ』


少年は国王に甘ったるい言葉で囁かれて、頬を染め、優越感に満ち溢れている。

まあ相手は絶世の美青年だし?
そんなやつに口説かれたらグラッとくるのも分かるよ。

しかも自分は異世界から召喚された救世主の姫巫女サマ。

出来すぎたお話、だけど酔うのには充分。


「でもさぁ…この子、誰?」


呼んだ覚えのない少年。
たしか、俺が呼出した姫巫女は可愛い女の子のハズだったんだけど。

俺にぴったりと張り付く男を振り返って、首を傾げた。







あ、ちなみに俺は神様。

昔はこの国を創った王様だったんだけど、最高神に見初められちゃってね。
今じゃ彼の奥さんで、神様の仲間入り。

そんな俺が一等大事にしてるのがこの国と民。

もう王様じゃないけど、愛し愛されて懸命に護ってきた国を助けていきたいと思うのは当然だよな?

だから俺は、破滅の危機に瀕している国のため、勝手だと言われようとも異世界の少女を呼び出した。

これで救われる。
そう安堵したのもつかの間。

やって来たのは件の少年。

この国を救おうという意志もなければ元の世界に帰ろうという想いもない。

眉目麗しい現国王や、宰相、重鎮達にチヤホヤされ贅沢な暮らしに興じている低俗な人間。

なぜこんな間違いを犯してしまったのかは分からないが、やってしまったのならしょうがない。
きちんと責任をとらないとな。

それに姫巫女というだけで盲目になり、責務も果たさない国王達にも幻滅だ。

このままじゃ実際にくる危機の前に自滅するのが関の山。









「さっさとお前も重たいケツあげろ」


相変わらず張り付いてる旦那、もとい最高神の頭を遠慮なく叩く。


「はいはい、まったく私の后は神使いが荒いですね」

「それを承知で無理矢理結婚したのはお前だろうが!
これから忙しくなるんだ、きっちり手伝ってもらうからな」


じとりと睨みつければ、やれやれと肩を竦める最高神。

だがすぐににやりと笑んで、俺の手の甲に口づけた。


「私の愛しい后のためならば」


その言葉に、俺もにやりと笑いかえす。







「さあ、国の再建だ」




End








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