ゆびきり
「俺にはむりだなぁ…」
頭ん中で呟いた言葉は声に出ていたようで、隣にいた友人「なにが?」と首を傾げる。
男前に分類されるそいつに幼い仕草は似合わない、なんて思いながら答えた。
「後追い自殺」
「はっ?!」
物騒な言葉に目を真ん丸くさせて、どうしたんだと問いた気な視線。
「なんか昨日ドラマで遊女の悲恋物がやってて。
最期は後追いして死んだんだよ」
「ああ、そういうことね。
確かに、お前は後追いする性質じゃないわな」
そんな繊細じゃねぇもん、って笑いすぎだろ。
とりあえず一発叩いておく。
痛がるフリは放っておいて、確かに自分でもそう思う。
「でも…、アイツが死んだら俺も死ぬって考えれる位にはさぁ……」
好きだったんだ。
実際には出来なくても、いなくなったら鼓動が止まってしまうんじゃないかって。
きっと俺たちは運命なのだと、錯覚するほど。
『好き』がいかに薄っぺらで、『愛』がいかに軽薄か知っていたのに。
永遠が確かなものに感じえたんだ。
「…なぁんてな!今、詩人っぽくね?ちょー繊細じゃね?」
「……馬鹿だろ!お前ぜってぇ馬鹿だろ!!」
さっきよりも爆笑しながら、ぶにぃっと引っ張られる頬。
「マジで、マジで痛いから!俺の顔が変形したらコネコちゃんたちが泣いちゃうだろ!!」
「いや、そんなこと言うお前のがイタイし!
それより、さっさと食堂行こうぜー」
腹減ったと教室を出る友人に、対して痛まない頬をさすりながらついて行く。
主不在のままの、アイツの席に指輪を置いて。
end