最終筆:発覚〜愚者達は出会う〜
下敷きを取りに理科室に入ると、いつもの私の席の前に高尾と……確か、前野君?がいた。
正直 邪魔である。
「ねえ、そこいい?」
後ろから声をかけると二人が振り返った。
「あ、邪魔だった?」とすぐどいてくれる前野君?に対して、高尾は動く気配がない。
「高尾?」
「江良…」
「緑間君がさっき探してたよ」
「………そっか」
どこか虚ろな高尾の受け答えに違和感を感じたけれど、私は下敷きを取らないといけないんだ、と高尾を無理矢理どかしていつもの机の前に立つ、と、
「あれ?私のウサギ消されちゃった」
「は?」
結構な勢いで高尾が私の肩を掴んだ。
「な、何?!肩痛い!!」
「あ、悪い……………待って、今なんて」
「?『肩痛い』?」
「その前!」
「『私のウサギ』?」
そう言うと、高尾は柄にもなく本気で焦っていた。
「まさか、あのあ〇がとウサギ描いたのって…………」
「私、だけど……………もしかして体つけたの……高尾?」
高尾を指差してそう聞くと、高尾は手で顔を覆って「ああああ……」とうめいた。
「まさかマネージャーとあんなことやってたとは………」
「………私もびっくりしたよ」
思わずと笑うと、高尾もつられたように笑みを口元に浮かべた。
「そういえば私、あれ描いてる人見つけたら言いたいことあったんだよね」
「あれ、奇遇。俺もなんだよなー」
そしてそれを、一瞬でいつもの不敵な笑みに変えて、
「君、馬鹿なんじゃない?」
「あんた、馬鹿じゃねえ?」
私達は 顔を見合わせて笑った。
『発覚』
今でも時々、理科室の机には
王冠を被ったあのウサギが現れる。
終
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