第六筆:消失〜別れ〜
六時間目が終わり、今は掃除の時間。
今日は俺は教室掃除なのだが、気乗りしなかったのでついサボってしまった。悪気はない。
真ちゃんに怒られるかなーなんて思いながらフラフラと校舎内をうろついていると、いつもの理科室の前に来た。
……もしかしたら落書きが足されているかもしれない。
そう思って理科室に入る。
理科室掃除のクラスメイトの視線を浴びつつ、いつもの席の前に行き……愕然とした。
あいつらが 机にいない。
ウサギ達が消されていたのだ。
「おい、高尾?」
机の前で立ち尽くす俺に声をかけたのは、ホウキを持った前野だった。
「…なあ、ここに何か描いてなかった?」
「ああ、なんかウサギがいっぱい……もしかしてお前が描いたのか?」
「まあ……そうだな」
「やめろよなー。そういうの俺達が消さなくちゃならないんだから」
その言葉でハッとした。
あの、俺と名前も顔も知らない同志のインスピレーションの結晶であるウサギ達を消したのは、周りにいるクラスメイト達なのだと。
言いようもない絶望感と虚無感、そして燻るような怒りに、俺は動くことも出来なかった。
『消失』
「……すいませーん、失礼しまーす」
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