第四筆:筋肉〜右斜め前の男〜



俺は悩んでいた。



この倍以上に増えたウサギ達をどうすべきかに。


はじめにこの惨状を見た時は我が目を疑った。

“何か増えてる……!!”

そして思った。
これは、このウサギを描いた人間からの挑戦なのだ、と。
さあ この数のウサギをどうする、という問いかけなのだと。

ならば俺はその問いかけに応えなくてはならない。


だから俺は非常に悩んでいた。

しばらく悩んでいると、不意に俺の前の席の奴……前野が振り返った。
俺は瞬時に机の落書きを教科書で隠す。

「高尾、シャー芯くれ。0.3あるか?」

こっちはそんな場合じゃねえんだよ 戦いの真っ最中なんだよ!という本音は隠して、

「おー、あるある。…ほらよ」

「おっ、サンキュー」

前野にシャー芯を2、3本手渡した。
そのために少し顔を上げたのだが、その時丁度俺の右斜め前…前野の隣に座る長谷山が見えた。

長谷山はガタイがいい男だった。
世に言うゴリマッチョだ。
多分大坪さん位ゴツいんじゃないかと思う。
確か野球部……ボディビル部?あれ、ボディビル部なんてウチの学校あったっけな…。


ぐるぐると思考の海を漂っていると、不意にインスピレーションの神が舞い降りた。
恐らくこれ以上ない答えが浮かんだのだ。







俺はすぐさまペンを持ち、増殖したウサギ達に向かい合ったのだった。













……そういえば、コイツらを描いてるのは一体誰なんだろうか。









『筋肉』

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