第三筆:増殖〜友達増えるね〜


理科室に入っていつもの席に座る。

ふ、と目線を下げた瞬間

「ぶふぉっ!!!」

…と吹いた。


ミヤちゃんは何事かと私を見つめている。

私は笑いながら、以前自分が机の端に描いた落書きを指差した。

「…残ってたんだね」

「ちが…違う、ミヤちゃん、顔の下見て」

「え?…………何これ」

目線を下げたミヤちゃんは、露骨に顔をしかめた。


ミヤちゃんの目線の先にあるのは、見事なボンキュッボンなナイスバディを手に入れたウサギ。

何故か彼女はビキニで、
脇には小さく『95・65・80』とご丁寧にスリーサイズまで書いてあった。
誰だ書いた奴。


笑いを噛み殺しながら『どうしようか』と考えを巡らす。



…改めて見るとこの女体ウサギ、パッと見マヌケだが、かなりのクオリティである。
私の落書きにマッチした体を描く人がいたことに、私は純粋に驚いていた。

その姿は余りにも自然で、もしかしたらこれは1つの作品なのでは、という錯覚さえ起こしてしまいそうだった。


…だからこそ、このほぼ完成に近い落書きに手を加えるのは躊躇われた。

なので取り敢えず。




周りに5つほどウサギの顔を追加しておくことにしよう。





嬉々としてウサギを追加し始めた私を見るミヤちゃんの瞳は、とても冷めたものだった。






…さあ、今度はどうなって返ってくるのだろう。








『増殖』

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