第ニ筆:美女〜欲望と理性の狭間〜
四時間目の化学の授業なんてやっていられない。
昼間の陽気による眠気と、空腹と、化学の面倒さのトリプルコンボなんだから仕方ない。
まあ 俺は理科室の一番後ろの席に座っているから基本的に寝ててもバレない訳で。
(……ん?)
何気なく机に端を見ると、何か落書きがしてあった。
『何だろう』とよく見てみるとそれは、
ありが○ウサギだった。
その時俺が「エーシー……」と呟いたのは恐らく反射だったのだろう。
それにしてもこの落書き、クオリティが高い。
ここまで気合いの入った落書きは今まで見たことがなかった。
しかし、体がないとはどういうことだろうか。…恐らく途中で飽きたか、授業が終わったかのどちらかだろうなどと考えつつ目線を前の黒板に戻す。
…黒板の前の席に今野さんの姿が見えた。
今野さんはクラスでも可愛い部類で、……こう、グラマーな体つきをしている女子だ。
男子たる者やはり一度は彼女を意識してしまう訳で、…俺もまたその例外ではなかった。
何となく申し訳なくなって、再び目線を下げる。
すると目に入って来るのはやはりあのウサギで。
(……………)
その時俺がシャーペンを持ったのは本当に気紛れだった。
別にいやらしい意味も何もなく、ただ純粋に、
このウサギに体を付けていた。
…この時の、ひたすらにペンを動かす俺の姿は、周りから見たら真面目に授業を受けているように見えていたたことだろう。
『美女』
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