君は知らないけれど

可愛いものが好き

甘くて、綺麗なお菓子も大好きだ




…それは周りには秘密だけれど。

だって、気持ち悪いだろ?
こんないい年した男が乙女趣味だなんて……。














「別に…いいんじゃないかなあ」

テーブルに出したクッキーを咀嚼しながらパルがそう言った。

パルは時々こうやってお茶をしに俺の部屋にやって来る。
……毎度毎度突然やって来るパルもパルだけれど、そんな同僚のために茶菓子や紅茶を用意しておく俺も大概だと我ながら思う。

「え、いやだって、ほら…俺結構体育会系の見た目だしさ」

「リオ君は気にしすぎてるんだって。別に大丈夫だよー」

"だって"とパルが続けようと口を開こうとした時、俺の部屋のドアがノックされた。


「リオ君いる?」


…そして顔を覗かせたのは我等が団長。
手には小さな箱を持っている。

「どうしました?」

そう聞くと団長はその箱を俺の方に差し出してニッコリと笑った。

「これ、お客さんにもらったからお裾分け」

「何ですかコ、レ…………」

「おー、可愛い」


箱の中身を見て衝撃を受けた。箱いっぱいに入っていたのはハート型の小さなマカロン。


「君こういうの好きでしょ?」


思わず団長に目をやると、団長は口元をニヤリと歪めて笑っていた。

「な、何で俺が、え?だんちょ……え?まさかパルが、」

「私ばらしてないからね」


狼狽える俺を尻目にパルと団長は笑みを浮かべ続けている。

「何で、何で知って……?」

「だって君、バレバレなんだもん」

「え」


サラリと放たれた団長の言葉に呆気に取られていると、
団長とパルはお互いの顔を見合わせて「ねー」なんて呑気にやっていた。

そして、パルはこちらを向いて、言った。







「だから、大丈夫だって言ったじゃん。








どうせみんな知ってることだもん」









『君は知らないけれど』

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