雪とデレ



しばらくすると名字さんが部室に連行されてきた。
名字さんをストーブの前に座らせた後、赤司君と緑間君の二人は監督に呼ばれて行ってしまった。
行く時に赤司君が「俺が戻って来るまで外に逃がすな」と言っていたので、とりあえず僕と黄瀬君、青峰君、紫原君で名字さんを包囲しておこう。

「……名字さん、あなたは何をしてるんですか?」

「雪だるまを少々……」

「手袋もしないで?!…ああもう手ぇ真っ赤じゃないっスか…ほらもっと暖かくして、髪も拭いて」

「はしゃぎすぎたんだ……ありがとう黄瀬君」

「……ねー名ちん?そのコートって名ちんのじゃないよね?」

名字さんが黄瀬君から渡されたタオルで髪を拭いていると、紫原君が首を傾げながらそんなことを言った。
確かに、 名字さんのものにしてはサイズが随分大きいようだ。

「あ、うん。何か緑間に着せられた」

「えっ」

「えっ?」

名字さんの言葉に部室の空気が固まった。

「……それ、緑間のコートだろ?」

青峰君がコートを指差す。
それを聞いた名字さんの表情はみるみる険しくなっていった。

「えっ嘘!やっばい!早く乾かさないとまた何か言われる!」

「え、気にするのそこなんスか?!」

「何?『私、緑間君のコートを…?きゃっ///』とでも言って欲しかった?」

「あ、いや……それはちょっと……」

「そんな名ちんきもいよ」

「ひどいな君らは。……まあ、緑間に感謝はしようかな」

その時、黄瀬君が少し嬉しそうだったのと、青峰君が楽しそうだったのを僕は見逃さない。
どうせ「緑間っち、頑張った!」とか「意外とやるじゃねえかあいつ」とでも思っているのだろう。

まあ僕もだが。


帰って来て冷静になった緑間君がどんな反応をするのか、またそれに小姑――もとい赤司君がどう対応するのか。




(これは見ものですね)











緑間君優遇回



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