朝起きたら猫になっていたんだが、どう思う
名前が学校を休んだらしい。
昔から健康が自慢だった奴が珍しい、と思いつつ盤上の駒達に思考を巡らせる。
ちなみにその情報は目の前の緑間から得たものだ。
聞かされた時は、この男は名前の出欠状況まで把握してるのだろうか、と少し心配になった。
パチリ、パチリと盤上に駒を打つ音が響く。
どちらともなく息をついた時、見覚えのある水色が脇に立っていることに気づいた。
彼はブランケットにくるまれた何かを大切そうに抱えていた。
「…黒子。どうした?」
「赤司君、少し来てください。緑間君もちょうどいいです、来てください」
「俺もか」
「出来れば。急ぎなんです」
常に淡々とした彼だが、今日は言葉に少し焦りが滲み出ている。余程のことがあったのだろう、と緑間も思ったらしく早々に椅子から腰を上げた。
「出来れば人目を避けたいので、部室に行きましょう」
****
「どう思う」
黒子が抱えていたブランケットから顔を出したソレは、俺達を見てただ一言そう言った。
「……………」
「…………」
正直言って、頭が追いついていない。
きっと隣の緑間もそうだろう。
ブランケットから顔を出しているのは青い目をした若干ふてぶてしい雰囲気だが綺麗な黒猫。
しかし喋った。
しかも名前の声で。
「征十郎君、緑間、どう思う。何か猫になってた」
もう一度黒猫が喋った。
その声は紛れもなく名前の声で。
「赤司君、緑間君、落ち着いて下さい。……この猫は名字さんです」
「名字さんです。こうなった理由は知りません。親に見つかったら面倒だと思ったので頑張って学校まで来ました。ヘルプミー」
黒子も名前も、何故かやけに冷静な様子で状況を説明していた。これはきっとあれだろう。テンパり過ぎて逆に冷静になったパターン。
「……状況は分かった。だが打開策は特に思いつかないな」
「…悪いが俺もだ。取り敢えず、今日のお前のラッキーアイテムを持っておけ……猫の首輪だ」
そう言って緑間は黒猫…名前の首に白い首輪を着けた。
「……緑間、ちょっと。落ち着いて。外して」
「…緑間君、相当テンパってますね」
黒子が名前の頭を撫でながらしみじみと呟いた。
「…征十郎君、エンペラーなんちゃらでなんとか出来ない?や、征十郎君なら何とか出来るよね?ね?」
「俺を何だと思ってるんだ?」
にっこり、そう返すと、名前は"ああ…"と天を仰いだ。
「…どうしよう」
朝起きたら猫になっていたんだが、どう思う「誰かとキスしてみたらどうだ?」
「キ……っ…!!?」
「桃井ちゃんとさっきしてきた……ダメだった」
「腹筋、背筋50回セットもやらせましたけど駄目でした」
「明日絶対筋肉痛だよ……ああ…どうしよう」
※夕方には元に戻りました
2/22記念
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