僕が予測した近い未来
「あれ、これ…」
部活が終わり、着替えをしていると制服のシャツの胸ポケットから見覚えのあるタニシのマスコットが落ちてきた。
俺の呟きが聞こえたらしい黒子っちがこちらを振り向いた。そしてそのマスコットを見て眉をひそめた。
「黄瀬君、その気持ち悪いフィギュア何ですか」
「………これ、黒子っちのオトモダチのっスよ。誰とは言わないけど」
「……名字さんですか」
そう 彼女だ。
何でも新しい『気持ち悪い』ガチャガチャが出たらしく、その中身がこれだったそうだ。
「ホント……こんなのどこで見つけてくるんスかね、名字サンて」
なくさないようにロッカーの棚にタニシを避難させながらそう言うと、黒子っちは何かを思い出したらしく「ああ、そういえば」と口を開いた。
気づくと部室内で着替えていた全員…要はいつものメンツが話に混ざる気満々でスタンバイしていた。
「黄瀬君て、名字さんのこと『〜っち』って呼ばないですよね」
黒子っちが人差し指をピンと立てた。
と 同時に周囲に『ああ……』と同意するような空気が流れる。
「黄瀬ちんてさー、『認めた人』を『〜っち』て呼ぶんでしょ?」
「実は名前をそこまで気に入ってないのか?」
「違……違くて、名字さんには、その、最初会った時に色々やらかしたから…その引け目?みたいなのがあって……何か、申し訳ないなあ……みたいな…」
「…そんな理由だったんですか」
「そういうことならまあいいだろう。」
…名字さんのことになると、赤司からは威厳ある部長の姿など消え失せ、ただの小姑のようになる。
緑間っちのことは応援してるけど、名字さんと上手くいったらそれはそれで大変なんじゃないだろうか。
主に小姑が。
もしそうなったら、緑間っちが徹底的にイビられるか他の人間が当たられるか、の二択だろう。
俺的には緑間っちがイビられてくれると凄くありがたい。
「…黄瀬」
「あ、何スか?青峰っち」
「何ニヤニヤしてんだよキメェ」
一人思考の海を漂っていると、不意に青峰っちに声をかけられた。
他のメンバーは俺のロッカーに避難中だったタニシマスコットを手に取り、何事かを話している。
気持ち悪いと言っていた黒子っちもだ。
「いやあ…名字さんと付き合う奴は大変だろうな、って……」
「…ああ。主に姑…小姑か?口うるさい小姑がいるからな」
……ああ、やっぱりみんな思ってたんだ。
ふ、と目を瞑ると、口やかましい小姑にいびられる男の姿が見えたような気がした。
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