教えてあげない


「赤司君は名字さんと同じ小学校だったんですよね」



部活が終わり、部室で何となく駄弁っていると黒子が突然そう切り出してきた。

『名字さん』という単語に緑間が若干反応したのが見えた。


「ああ、そうだね」

「名字さんて、どういう子だったんですか?」

「『どういう子』……?」

何て言おうか思案していると、黒子の隣で話を聞いていた黄瀬も「俺も知りたいっス!!」と目を輝かせていた。

青峰は青峰で当然のように話を聞いているし、紫原は俺の後ろで静かに駄菓子を食べている。
緑間に至っては柄にもなくそわそわしていた。

……ああ そうか
名前はここにいる全員と知り合いなのか…そうか…。

「名ちん可愛かった?」

「あいつが赤ランドセル……やべ、笑える」


……何と言うか
『今まで必死に自分の同級生から隠してきた妹を知られてしまった』
そんな複雑な気持ちだ。

まあ 俺は名前の兄でもなければ恋人でもないから名前の交友関係に口は出さないけれど。






…出さないけれど、俺が勝手に牽制するくらいは許されるだろう。


「…名字は、変な子だったよ」

「……何と言うか」

「予想通りだな」

「えー…何か、エピソードとかないんスか?」


予想通りがっかり、というか不満げな反応が返ってきた。

それを見て満足感、優越感のような似た何かが満たされていく。
それにつられて口角も自然に上がっていった。

「エピソードなんて、たくさんあるよ」




"でも"
















教えてあげない






「えー」

「赤司君……」

「俺が簡単に名字の話をするわけないだろう?」

「赤ちん何でー?」

「可愛い可愛い名字のことだからな」

「な…っ!!赤司今のはどういうことなのだよ!!」

「冗談だよ」








もう少しの間、隠し続けてもいいよね?


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