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「……と、思ったのだが」

はて。と首を傾げてあたりを見渡す。
見回したそこには見慣れない景色が広がっている。大手企業の受付、と言ったような風貌でどうやら何かの建物内にいるようだ。

「ここにおられましたか。」

びくり。背後からかけられた声に思わず肩を浮かせてそっと振り向けば真っ白な布で顔を隠した黒ずくめの男がいた。その布は目から鼻までを覆い隠し、口元だけがのぞいている状態で非常に表情が読みとりにくい。

「少々手荒な呼び出し方になってしまい申し訳ありません。しかし、あのままあの時代にいてもあなたはいずれ時代修正派によって消されてしまう存在。それ故に忌むべき手を使ってしまったことは此方としても遺憾であり、お詫びの使用もございません。」
「は…?あの、何をゆってんですか?全く意味が…ああまあいいや。それよりここは?早く家に帰んないと…母さんにも心配かけてるだろうし、妹にもきっとどやされるし……父さんなんかは絶対一発といわず10は殴ってくる…南無三」

布男の言ってることの半分も理解できなかったが、その言ってる内容に少しの不気味さを感じて少しでもそれを紛らわせるかのように「家に帰りたい」という旨を吐き出せば首を傾げて不思議そうにされたあげくにクスクスと笑われた。あれ、存外この人表情わかりやすいかもしれんぞ?態度に出やすいな!しかも割とムカつく方向で!

「家に帰りたいとは、おもしろいことをいいますねえ。」
「あ?何がおもしろいっていうんですか?別に、ふつうのことで」
「だってあなた、死んでるじゃないですか」

余りにも笑うものでイライラしながら返したものに食い気味に返された「死んでるじゃないですか」が脳内で延々とリピートされる。

「し…は、え?死ん…で、」
「自覚なさってないのですか?あなたは先ほど時間軸に此方が少し手を加えたことによってトラック事故で死んだのですよ」
「……はぁ?!」

布男いわく。
俺には審神者なるものの力が強く備わっているらしくそれを脅威に感じた時代修正派とやらによって近々存在そのものを消されそうになっていたところを先に死ぬ未来にして此方側に引きずり込んだ…ということ。存在消されるなんてそれはどうなのともおもったが、じゃあ殺して霊体を引き入れよう!と思ったこの時の政府とやらもどっちにせよやってることは外道だと思った俺は全く悪くない。むしろ同情されてしかるべき。
しかも驚いたことに今の西暦は2205年だという。あほか。200年近くもタイムリープとかどこの時を駆ける少女だ。ラベンダーの香りを嗅いだ覚えも胡桃のようなモノを割った覚えも俺にはない。

「あー…とりあえず。とりあえずですが大事なところはわかりました。近いうちに俺は存在が消されそうになっていた。そしてあなた達は貴重な戦力を失うには勿体ないと思って事故を引き起こして俺を殺した。今ここにいる俺は霊体。ということでいいんですよね?」
「ええまあ、掻い摘まめばそうなりますね…訂正するとすればあなたの時代ではあなたは死んだことになり、あなたの空になった器を回収してまた魂を入れ直した…というところでしょうか?」
「なあそれもうなんて錬金術なの?俺の身体どっかに血印あったりするわけ?」
「ないない」

意外とノりよく弾むように進んでいく会話にあきらめもついてきた。
死んでるんなら、ジタバタしたところで仕方ないわなあ。

「で、あなた達は俺を殺して審神者にして、何をして欲しいんです?」

ため息をはきつつ布男に向き合えば見えている口元をにんまりと歪めて男はいいはなった。

「世界を救ってください。」

と。






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