最初の鍛刀が成功するまでの話。


あれよあれよという間にさ、は…はにわ?「さ!に!わ!!」あ、そうだ審神者…に政府の人にされ、「最初の五本の中から好きなモノを選びなさい」となんだか偉そうなおじいさんに言われ(どこのポケットに入るモンスターだと思ったことは内緒である)、選んだのは加州君だった。
今、審神者が言えなくてつっこんでくれたのも彼である。
「力を込めてみてください!」ともふもふとかわいらしい外見のこんのすけに言われ、「力を込めるとはなんぞや!!」となりつつもふぬう、と何となく力んだら顕現したのが彼だった。

「ホント、その何となくって言うのがひどいよね〜」
「うん…ごめんね?」
「いや、別に…謝らないでよ。責めてるわけじゃないんだから……」

「主が呼んでくれたから、俺はここにいるんだし」と首を傾げた私と同じように首を傾げながら少しいじけたように頬を膨らませる彼は実のところ生物学上女の私よりも綺麗で美人だ。
最初に顕現したときに「うわっ、すごい美人……」と思わず口に出してしまったときすごく嬉しそうな顔をしていたし、本人も常に「俺を愛して!」「綺麗に着飾って!」と言っているので多少のオネェ感が否めないがそんなところも含めて顔が良いとは得な生き物である。
今は鍛刀でだいぶ時間がかかるので加州君と縁側で足をぶらぶらさせつつ茶話会(と言う名のプチ女子会)の最中である。

「ところでさー、」

足をぶらぶらさせながら声をかけてくる加州君に「んー?」と同じく足をぶらぶらさせながら応じれば「こんなのんびりしてていいわけ?」と突然のシリアスな声のトーン。
「ん?」と加州君の方を向けばすごく真剣な真顔で「大丈夫なの?」と繰り返し問うてくる。
実のところ、鍛刀はこれがはじめてではない。実際はもうなん十回となくやっている。
だが、成功しないのだ。
私がはに…審神者になってもうひと月はたつが我が本丸には加州君とこんのすけと私以外はだぁれも居ないというのが現状。政府の人たちにもそろそろ見限られそうな危機感。鍛刀をなん十回となく繰り返してなぜまだ資材があるのかというと、政府の人が身寄りも何もなくなってしまった私に哀れさを感じて色々と手を尽くしてくれてるからだ。普通なら功績の高い本丸に多くの資材が行くところを私のところにも回してくれているからこうして加州君しか居ない私の本丸にも山ほどの資材がくる。くる、のだが。
それももう限界そうである。こんのすけを通して政府の人とお話しした結果、「君は力があるが今後鍛刀が成功しなければ審神者をおりてもらう」と言う最後通告がとうとうきてしまったのだ。ちなみにこのことは加州君には言ってない。色々と彼は私の世話を焼いてくれるとても優しい人であるのと同時に少し重すぎる。余計なことを言って自分て自分の首を絞めたくない。ただでさえ最後通告にビビってしまっているのに加州君にまで板挟みにされたくない。
加州君の再度にわたる「本当に大丈夫?」と言葉に「ウン、ダイジョウブダヨ」と若干の片言になりつつ返せば鍛冶場から響いていた音が止む。鍛刀が終わったようだ。
よっこらと立ち上がり「どうか出来ていますように……」と願う。
鍛冶場に向かう私の後ろにはもれなく加州君もついてくる。
鍛冶場の戸を開ければむあっとした熱気とともに二振りの大きな刀を掲げ持った小人さん達が出迎えてくれる。

「っ、か、加州君!太刀だよ!太刀が二振りもあるよ!」
「うん、主の場合鍛刀は出来てても呼びかけで応えてもらえないって言うのだからそこで喜んでたらだめじゃない?」

ズバーッと加州君に言葉の刀で袈裟切りにされ「ウッ」と言葉に詰まりつつ、小人さん達から刀を受け取り一人一人にありがとうと労いの飴玉を配る。

「さて、」

二振りとも、とても綺麗な刀。
まず、二つをじっくりと眺め回して撫でる。「どうか、私のところに降りてきて下さい」そう小さく呟いて二振りを目の前に置いて土下座。
加州君と一緒でも、とても毎日は楽しい。
一緒に話したり、お茶したり…遊んだり。でも、それだけじゃ足りない。この本丸は二人と一匹だけじゃ広すぎる。

「(寂しいのは、キライ。)」

振り返ったとたん、何もなかったあの日。この本丸にはそれに似たものがあるから。
どうか、

「どうか、家族になってくれないですかね?」

頭を下げたままそう口に出せば、後ろから「っぅぇ?!」という加州君の声。
加州君になにがあったのかと確かめようと顔を上げようとすればそれを遮るように置かれた後頭部の掌に「???」と疑問符が浮かぶ。

「俺たちでよければぜひ。」
「家族に、」

その言葉に、ゆっくりと顔をあげれば、まず見えたのは真っ白な装束と、青い装束の足。
焦れったいほどにゆっくりと顔を上げ、その面を仰ぐ。ぱちくりとまばたきをして、すう、と深呼吸をひとつ。

「か、かしゅうくぅうううううん!!!!やばい、噂のおじいちゃんがきてるううううううううう!!!!!」

動揺のし過ぎで思わず叫んだら後ろから叩かれました。
因みに後日政府の人に報告したら略したら「やればできるんだから最初からやりなさい」と言った感じの文章をつらつらと書き綴られYDK認定されました。
三日月宗近、鶴丸国永。
これが私が最初に鍛刀成功した刀剣2人である。

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