うちの部下が反抗期なんだが | ナノ


「みかんー!何処に行きやがった!!」

血眼になってみかんを探していた。自分が発する怒号が船内に響き渡り、床の上を荒々しく歩く音が鮮明に聞こえていた。クルーとすれ違う度に俺を見て小馬鹿にするような笑い声が耳に入ってくる。理由は既に解っている。また懲りずにみかんが俺の寝てる間に顔面に落書きをしたのだ。今日という今日はみかんを確り叱ってやらねばならない。落ち着けと声を掛けてくる奴等を押し退けて、一直線にみかんの部屋へと向かって行った。

「みかん!おめェまた人の顔に…、」
「た、隊長……」
「……っ!?」

ノックも無しに、荒々しくドアを開けた瞬間、視界に入ったのはバスタオル一枚だけ纏った裸同然の状態で立っているみかんの姿だった。頭が真っ白になって、言いたいことも忘れてただただドアの前で突っ立って、金魚のように口をパクパクさせた。

「す、すまねェ…。」

一言そう言って身体をくるりとみかんとは逆方向に向けて、これ以上視界に入らないように努めた。顔に熱が集中していくのが解って、思わずテンガロンハットを目深に被り直した。

「あはは。隊長、耳まで真っ赤ですよー。」
「うるせェ、速く服を着やがれ!」
「何で?私の部屋だもん、どんな恰好をしたって自由じゃないですか。」
「……そうだけどよ。」
「それに隊長、私に何か用なんですよね?」

言われてはっとした。衝撃的な場面を目撃して一瞬忘れていた。思い出したらまたふつふつと怒りが込み上げてきた。くるりとまた身体をみかんに向けて口を開いた。

「ああ、そうだ!おめェまた人の顔にっ…!……頼むから服を着てくれ……。」
「意識しなきゃいいじゃないですかそんなもん、」
「意識してもしなくても関係ねえよ!いいから服を着ろ!」
「いつもは私のことそんな目で見てないくせに、急に何言ってんですか。本当に面倒くさい人ですねー。」

こんな状況だというのにみかんはいつものポーカーフェイスを貫いていた。また服を着る気配もない。いつもは小生意気な部下としか見ていなかったせいか、急にこのような性を意識させる場面がちょっとでもあるとどうすればいいか解らなくなってしまう。それに、よくよく考えれば女の中でもみかんとは一緒に過ごす時間も長いし、何だかんだ言ってみかんとは仲が良い。見た目も可愛いし、口が悪い点については少々目を瞑ってやればそんなに悪い奴でもない。あれ、もしかするとこの調子で最終的にはみかんとくっつくとか、いや、まさか。ありえねぇ。

「…ありえねェ。」
「はい?」
「何でもねぇよ。てか、いい加減服を着ろよ!」
「隊長が出てけば丸く治まると思いますよ。」



ノックは必ずするべきですか?



「親しきなかにも礼儀ありですよ、隊長。」
「何でだろうな、お前に言われるとイラッとくるぜ。」


2015.10.10.加筆.

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