うちの部下が反抗期なんだが | ナノ


「よお〜、そこの可愛い娘ちゃん。そんな上半身裸の変態兄ちゃんより俺達と遊ぼうぜぇ〜」

山賊に絡まれた。とある小さな島に停泊中で、散策でもしようと街をエース隊長と一緒に歩いていたら絡まれた。昼間から酒を飲んでいたらしく、其処ら中酒臭くて、いかにもお風呂に入ってなさそうな、質の悪い山賊だった。最初に声を掛けられた時は隊長が相手にするな、と言ったので無視して二人で通り過ぎたが、今は私達の行く手を阻むように前に来られて、結局足止めされてしまった。

隊長はテンガロンハットを目深に被り、頗る不機嫌そうだ。また下手に山賊が何かを言えば、今にも隊長は攻撃するだろう。一触即発の空気が私達を包んだ。

「はあ…。やっぱりこの人変態に見えますよね…。」
「よし、お前ごとこいつら燃やす。」
「こんなときに仲間割れするなんて隊長失格ですよ!」
「てめェが引き金だ馬鹿野郎!!」
「あ゙ーもう、解りましたよ。私が全部悪かったんです。隊長は何にも悪くありませんよ。」
「んだよその大人な態度は!?まるで仕方がないから折ってやりましたみてェな言い方は!?」

全く、今はそんなことしてる場合ではないのに。呆れてまた溜め息を吐いた。ちらと山賊を見れば、私たち二人の下らないケンカを見て困惑しているようだった。

「な、何か良く分かんねえけどよくも俺達を蔑ろにしやがったな!もういい、女ごとやっちまえ!!」

リーダー核らしき男の一言を合図に、周りを囲むようにして待機していた仲間が一斉に私たちに牙を向けてきた。

「あ、隊長、何か此方目掛けていっぱい来ましたよ。」
「面倒くせェな。俺は此方片を付ける。お前はそっちを片付けてくれ。」
「了解!」

そう言ってズボンのポケット(通称四次元ポケット)から機関銃を取り出した。そしてじゃきんと音を鳴らして銃をセットした。

「うおりゃあっ!」
「んな、何で俺の頭に銃口を向けてんだよ!?」
「あ、本当だ。」

はっとして銃口の先を見れば隊長の頭に向いていた。危ない危ない、サッと銃口を隊長から退けて、山賊の方向へと向けた。隊長と背中合わせになるような体勢を取り、四方八方へと乱射し始めた。周りにはそれなりに店や民家があったが、まあ何とかなるでしょうと思った。山賊たちもまさか私がこんな町中で銃を乱射するなんて思わなかったらしく、パニックに陥っていた。其処ら中ぎゃーぎゃーという叫び声が聞こえてきたが、こうなったらもう止めるのも面倒くさくてそのまま乱射しておいた。




・。

・。




山のように倒れて積み重なっている山賊を、橙色をした優しい夕日が照らしていた。その山からどんどん離れて行くようにゆっくりと歩いている二つの影が見えていた。遠くに聳える山々からは、からす達の鳴き声が聞こえてきた。

「いや〜あ、うっかりうっかり。」
「何がうっかりだ。絶対ェわざとだろ。」
「わざとじゃありませんよ。」
「じゃあ自分の仲間にどうやったら銃口むけられんだよ?しかも見境無しに其処ら中撃ちやがって。」
「あの場合仕方がなかったんです。所謂、case-by-caseですよ。」
「ばーか。」


此の場合case-by-caseですか?


2015.10.10.加筆.

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