短編格納庫 | ナノ

学生エース君がイケメンすぎる

ばさりばさりと音をたてて手の中から崩れ落ちてゆくプリントたちは、ひんやりとつめたい教室の床に不時着して足元に広がった。プリントの落ちてゆくのが、スローモーションで視界に写り、それを客観的に見ていた。目の前の彼は「あーあ、」と言いながら私の代わりに屈んでプリントを拾い集めていた。私はその時思考が停止し、身体が硬直して動くことすらままならなず、ただただ彼の様子を目で追うので必死だった。

「お前、数学42点って、平均点以下じゃねえかよ。」
「えっ、」
「俺だって数学苦手だけど平均点以上だったぜ。」

くくく、と小さく可笑しそうに笑ってエースははい、と数枚のテスト答案用紙を手渡した。一番上にきていたプリントは今回のテストで一番の最低点数だった数学の答案用紙だった。右上にくっきりと42の数字がどうだ、言わんばかりに存在を誇示している。誇示しているわりには残念な点数だ。先程のこともあるのに、また度重なる辱しめを味わうなんて、そう頭の中で思いながらプリントを貰うと、恥ずかしくって思わず視線を彼から反らし、強く目を瞑った。そして今までの一連の出来事をパズルのピースを一つ一つくっつけていくように丁寧に頭の中で整理していった。部活を終えて、放課後の教室で一人、帰りの支度していたら、いつのまにかひょっこりと彼が現れたと思ったら此方に近付いてきた。何かあったのかと声を掛ければ、私の質問を見事に無視して彼は一言、「好きだ。」。今の彼の一言に耳を疑って動揺する私を他所に彼は突然ちゅ、と可愛らしくリップ音をたてて唇をくっ付けた。あまりの衝撃に鞄に入れようとして両手に持っていたテストを落とした、と、ここまでだ(あと、拾ってもらった際に数字の点数を見られた)。ぐるりぐるりと、断片的に思い出す。考えれば考える程、身体中が火照り呼吸が苦しくなって行く。まるで海の中で溺れているような気分だ。

「なあ、」
「はっ?」
「返事は?」
「え?」

突然声を掛けられて思わず声が裏返りそうになって必死に抑えた。そうだ、私は告白されたんだ。此処でやっとそのことに気付く。彼の気持ちに応えなければ。

「私も、好き。」

そう言えば、彼は少し驚いたように目を見開いた。以外にすんなりと言えた一言に、私自身も酷く驚いていた。彼はいつもと同じような表情だったけれど、頬はほんのり淡い桃色に染まっていた。その姿が可愛くて思わず笑った。すると彼は力を抜くように大きく息を吐いた。彼の吐いた溜め息は二人きりの教室によく響いた。

「あー、」
「どうしたの?」


結構照れるな、と微笑して彼はくしゃりと私の頭を撫でた。窓から射し込むオレンジ色の夕日が彼を照らした。その姿がかっこよくって思わず見惚れていた。すると急に、彼が抱きしめてきたと思ったら、再び彼が私の唇を奪った。


再びプリントは全部、ばらばらと落ちてしまった。



溺れてしまえ



(息をつくことさえままならない)



title gazelle.

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