淫乱娘と童貞石田君 「ねえ、さっきっから見てたでしょ。」 心の臓が跳ねる。刹那、手の力が抜けてゆき、抑えていたはずの頁がだらしなくぺらぺらめくれてゆく。初夏の風はどこか湿り気を帯びている。口を幽かに明けて風邪を舐めればすこし甘い味がした。女は此方を見ながらうっすら笑みを浮かべている。しまった、と思った。 「……気付いてたのか。」 「うん。だって、私も三成君のこと見てたもん。」 「何、」 仄かにピンク色の膝小僧はいつも乾燥している。最近怪我をしたのかキャラクターのくまの絆創膏をつけている。子供の用だと思った。スカートが風になびいているが得る度に心臓がうるさくなる。落ち着けと呟けば心臓はうるさいと怒って余計に鼓動を早める。性質が悪い。読んでいた本を取り上げると、女はぺらぺらめくって、それからまた私とかちりと視線を合わす。この女の言動全が想像の範疇を越えていた。ずずず。女が紙パックのミルクティを飲み干す。 「三成君、私のこと好きでしょ」 「な、」 「好きでしょう。」 顔真っ赤だよ、そう言ってクスクス笑う貴様の顔も鏡に映してやりたいと思う。肌蹴て見える鎖骨やら、時折透けて見える下着の紐だとか、すりあわされる膝だとか、すべてが私の五感を刺激する。あともう少しで決壊しそうな理性を吹き飛ばすかのように女は傍までよると、ねだるように上目遣いをする。そしていつも以上にまるで外の夕日のように頬の赤い女は、それでも続ける。 「私、三成君とならエッチ出来るよ。」 「………、」 だって、私も君のことが好きだから。視界に迫ったのは、薄ら笑いを浮かべた女の大きく黒い瞳だった。 2012.05.20. |