徳川に告白される 彼女はまるで今時の女子高生とは違い浮世離れしているように見えた。実際、彼女は学校では浮いていたと思う。ハーフでもないのだけれどまるで異国の少女のように大きな瞳を持っていて、唇はいつもさくらんぼのように瑞々しかった。中でも一番彼女の持ち物の中で美しかったのはその大きな瞳だ。二重まぶたはくっきり線を見せ、睫毛は化粧をせずとも長い。異国情緒あふれる彼女はどこか儚げで、それが何を喋らずとも人の目を何となく引く。いつも特定の誰かと行動するというわけではなく、だいたい一人で音楽を聴いていることのほうが多かった。敬遠されることはなかったが、もの好きの女子どもからはよく噂が耐えなかった。援交をしてるだとか、してないだとか、父親と近親相姦だとか、母親は麻薬中毒だとか。本当にあることないことひどいものだったが彼女は全然気にしない様子で、彼女は本当に強い女子だと思った。そんな彼女にお近づきになりたくて、最近は専ら彼女の追っかけをするのが放課後の恒例となっていた。 「今日もここに居るのか。」 「駄目?」 「いや。」 放課後の図書室は閑静で人も数える程しかいない。彼女はいつものイヤホンを語っぽ付けたままつけたまま、いつものように英文の漫画を読んでいる。彼女に向かい合うように座れば、彼女はちらりとこちらを見ただけでまた本に視線を移した。図書館にいる人々が幾度となく自分たちを見ているのを感じた。やはり彼女は一目置かれているのか、はたまた自分に対する視線なのか。 「恋人が出来たって本当か?」 「は、何それ。」 「十歳も年上で外人で堅気じゃなくてものすごい金持ちの男だって。六本木ヒルズに家があるらしい。」 「阿呆くさ。」 「男女構わず5万ポッキリで相手するっていうのは?」 「何それ?バカバカしい。」 「ハハ、全くだ。」 彼女は呆れた顔をしてページをめくった。その顔はどこか笑っていた。彼女は儚げだけど強い。でも本当は寂しがり屋だ。誰かが隣にいてくれるのを本当に嬉しく思っている。 「じゃあ、わしがお前を好きだっていうのは?」 ポツリとつぶやけば、彼女は視線を上げた。パサ、と手に持っていた本が床に落ちる。図書館にいた人間の視線がまた彼女に集まって、それからまもなくまた離れる。泣きそうな顔だった。 「嘘だよ、そんなの。」 「嘘じゃないさ。」 笑ってそういえば彼女は笑って、それから少しだけ泣いた。彼女は強い。でも本当は普通の女子だ。 2013.02.18. |