肉食系なエース隊長 どろりとしたしろい液体は握っていた手を伝って床に落ちた。暑さのせいか、次から次へと溶けては流れ、溶けては流れを繰り返す。手にはぬるりとした感触と、生暖かな感覚が残った。 「あーあ、」 「『あーあ』じゃねえよ。ふけよ。」 隣では呆れたような表情をして一連の場面を見ている頬にそばかすある男が一人。さっきまでグースカ寝ていると思ったら、どうやら気づかぬうちに起きていたらしい。 「熱いねー。」 「夏だからな。」 「食べる前に全部溶けちゃった。」 「速く食わねえからだ。」 少し怒ったように言って彼はキッチンへと向かっていった。そして布巾を片手に直ぐにまた再びこちらに戻ってきた。 「何で俺が拭いてんだよ、」 「自分からやったじゃん」 「じゃあ感謝ぐらいしたらどうだ?」 「ありがとう、」 そう言えば、彼はふんと鼻をならして黙々と拭いていた。何だかんだいって何でもやってくれるエースが好きだ。冷たいふりして本当は優しくて真面目なのだ。 「手、洗ってこいよ」 「んー、動くのめんどくさい。」 「はあ?」 「熱くて。」 「理由になんねえよ。」 あははと笑えば、またエースは呆れた顔をして溜め息を吐いた。ソフトクリームの甘ったるいドロドロが、指にへばりついて離れない。気持ち悪い気がしたが、立ち上がるのも面倒でそのままにしておいた。そしたらまたエースが怒ったように視線をこちらに落とした。そしてぐい、と無理矢理汚れている方の手を掴むと、アイスのついた小指を口に含んだ。 「あっ…。」 少し驚いて思わず声を出した。小指の感覚と自由を奪われ、身動きが取れなかった。じんわりとした温度が徐々に小指に伝わり、彼の舌が複雑に絡まってきてふにゃふにゃする。 「返して、」 「嫌だ。」 唇に小指を含んだまま彼はそう言って、また小指を口内で器用に転がした。たまに歯で甘噛みしたりして、どうしても返してくれなかった。まるで私の小指を食べてしまったようだ。 「返してほしいか?」 「うん。」 「じゃあ、キスしろよ。」 「えー」 「じゃあ返さねぇ。」 困ったなあ、と眉を下げれば、彼は意地の悪い感じで笑った。このまま小指を返して貰えなかったら、おばあちゃんの手みたいにふにゃふにゃにふやけちゃう。観念して唇を近づければ、彼は小指を放して、私の手を掴んでいた手を、今度は私の頭に回して、自分の唇を私の唇に押し付けた。エースの口の中はさっき食べていたアイスの味がして、すごく甘かった。 食べられるのを待っている title gazelle. |