シュレーディンガーの仔猫

お気に入りの場所は譲らない

メリエンダ前の午後。
お気に入りの場所に座って微睡んでいたら、下からかん高い声が響いた。

「あーーー!?名前何してんのよ!?」
「……うっさい、フランペ」

このシャーロット家の36女、フランペ。昔から好かれてはいなかったが、私がカタクリの彼女になってから特に、私を目の敵にしてくる。



「たかだか看護師の分際で、私になんて口きいてんの!?」
「はいはい、サーセンフランペ様。今はオフだから看護師じゃないけどね」

ふわぁ、とあくびをしながらまた目を閉じる。

……閉じたけど、無駄なことは分かっている。

ビッグマム海賊団の看護師として何年も働いてきて、フランペがもっと小さい時から世話もしていたから、性格はよく知っている。絶対まだ騒ぐ。

可愛い顔してるんだから、あの性格だけ何とかならないもんかな。



「むっかつく!カタクリおにー様はどうして、こんなに無愛想なコイツを恋人にしてるの!?」

何言われても黙っておこう、と思ったのに、フランペの直球の質問に、思わず目を開いてしまった。
これは、私も答えが聴きたい。

私を膝上に座らせているカタクリを見上げると、目を瞑っていた。軽く腹筋に頭突きして、注意をこっちに寄せる。

「……どうして?カタクリ」

どうせ聞いてはいただろうから、答えの催促だけする。
カタクリはゆるゆると片目を開けてこちらを見下ろし、ぽん、と私の頭の上に手を乗せてきた。

「名前の性格が好きだからだ」

そのままくしゃくしゃと髪をかき回される。髪型が、とか思わなくもないけど、撫でられるのは嫌いじゃないから、そのまま大人しく撫でられておく。硬く大きな手のひらから伝わる優しさが心地よくて、自然と目が閉じていく。

それに、その答えは嫌いじゃない。

「ストレートに言うところ、嫌いじゃないよ」

目を開けずに、撫で終わって離れていこうとする手を握って、私の膝においた。こうしていると、あたたかさがもっと伝わってくる。

微睡みの中、カタクリもまた目を瞑って、このまま2人して夢の世界に行くものだと思った。



「なにイチャついてんのよ!!?」

しかし、フランペはまだ怒っていた。
カタクリおにーちゃんの事が好きなのはいいけど、いい加減私を恋人だと認めて、カタクリのこと諦めてくれないかなぁ。



「いいからっ、カタクリおにー様の膝から降りなさいよ!!」

何を言われても今度こそ反応しない、と決めていたのに、見過ごせない、許せない言葉を投げかけられた。

「は?ここ私の指定席なんだけど」

フランペを一瞬睨みつけて、今度こそしっかりと目を瞑る。
ギャアギャア騒ぐ下のことはシャットアウトして、奪われそうになったこの場所をじっくりと堪能する。

ごつごつして座りにくい、けど暖かい安心感のあるカタクリの膝の上が、この世界で一番好きな場所。そこを退くだなんて、絶対しないし。



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