新妻くっきんぐ!

少女、最後の夜

「はじめまして、名前姉さん!35女のプリンと申します」

ママとの挨拶もすみ、カタクリさんの兄弟姉妹への自己紹介もそこそこにお開きとなったお茶会。

その夜、ノックされたドアを開けたらそこには、美しいお姉さんが笑顔で立っていました。
おおっ、私と同じぐらいの身長の人だ!



……というか、ちょっと待って。明らかに年上の人から姉って呼ばれるのなんで!?カタクリさんってこの家の長男だったっけ!?そもそもそんな話カタクリさんとしたっけ!?

全然思い出せないぃい!!

だけど、一応仮にも王女。自分の中で騒いでいるのを隠して、穏やかに微笑む。

「名前と申します。私に姉だなんてつけなくていいですよ」
「そう?じゃあ名前も私のこと、プリンって呼んでね!」

プリンさんは良い人そうな優しい笑顔で、友だちの関係になったかのような素敵な提案してくれた。
めっちゃ良い人……!

人の良さに感動しているとふと、視界の端、プリンの後ろに何かいるのが見えた。なんだろうと思いドアをもう少し開けると、それは布を大量に抱えているポーン兵さんだった。

「カタクリ兄さんに名前の洋服見繕ってって言われたからお邪魔したんだけど、平気?」

こんな可愛い子に小首を傾げながら言われて、断れる人っているの?入れたくないどころか、むしろもっと話したい。
どうぞどうぞ、とポーン兵さんと一緒に部屋へ招き入れた。





持って来てくれた洋服をベッドに置いてもらったのだけど。だけど!

「私のお古でごめんね、気に入ったのあったらどうぞ!」
「か、かわい……!」

持って来てくれた服の可愛さに、手が震えた。なにこのお姫様みたいに可愛い服たち!!

フリルの付いたワンピースとか、パステルカラーのズボンとか、リボンが付いてる上着とか、みんな高級お菓子のパッケージみたいに可愛い。

私の島だと年一回見られたらいいくらいの、豪華さと甘さと優雅さを備えた高級お菓子。そんな贅沢なものが、本当に服になっちゃったみたい。

ここの人たち普段からこんな服着てるのか。そりゃクローゼットさんやママは私の服が可愛くないっていうわ。

即決で全部もらうことにした。明日からこれ着よ!





速攻で用件が終わっちゃったのに、せっかくだしもう少しおしゃべりしましょ、と最高の提案をもらった。
そう思ってくれたのが嬉しくて嬉しくて、気分がさらに跳ね上がる。ベッドからテーブルに場所を移し、2人のお茶をすることにした。

始めはティーポットにもティーカップにも騒がれた私のお茶淹れテクニックだったけど、2週間もやっていれば慣れたもので、我ながら上品に紅茶をカップに注いでいけている。
ものが喋るのも大分慣れたよね。

「明日結婚式でしょ?独身最後の日ってどんな感じなの?」
「実感ない、かな。私、カタクリさんのこと全然知らないし」
「まだ始まったばかりだもの、これから知っていけばいいと思うわ」

紅茶のカップをプリンに出して、もう一つを向かいの席、私の前に置いた。
ありがとう、とカップに手を付けたプリンを眺める。



……あ、もしかして、カタクリさんの事を聞けるチャンスじゃない?

思い立ったら聞かずにはいられない。明日から一緒に暮らす人のリサーチ、ちゃんとしとこ!

「プリンから見たら、カタクリさんって、どんな人?」
「素敵な人よ。兄としても、将星としても」



にっこりと微笑まれたけど、しょうせいって、なに?
小生…は、意味分かんないから多分違うでしょ?え、なんだろ?

「しょうせい……?」
「え、そこからなの?」



口に出てしまった私の疑問を苦笑されて、ハッとした。

やっちゃった。



変な話題振ってカタクリさん怒らせたら最悪だから、とカタクリさんのことを何も知ろうとしてなかった。国のためって思って聞かなかった。

だけどそれは、無知な妻の夫、と言われるカタクリさんのことは何も考えていないってことで。

何をしていたの、私。
国は大事だけど、二者択一じゃないんだから、もっとカタクリさんのこと考えても良かったじゃないか。



かちゃん、と軽い音がして、知らず下がっていた顔を上げる。プリンはカップをソーサーに置いて、慈しむような目で笑っていた。

「私が教えるのもいいと思うけど、名前はカタクリ兄さんから聞いて教えてもらった方がいいと思うわ」
「……聞いたら怒ったり、しないかな?」

無知はよくないって気が付けたけど、いちいちカタクリさん聞かれるの嫌なタイプかな。しかも多分、知ってないといけないような事だし。



「しないわよ!夫婦仲が冷え切ってたい、ってタイプじゃないだろうし」

だけど、プリンに明るく強く否定され、勇気が出てくる。

そうだ、カタクリさんは船酔いしても優しかった。
優しさに甘えてしまうのは申し訳ないけど、最初だけなら、許してくれる、かな?

「これから夫婦になるんでしょう?会話のダメなラインも含めて、知らないことは知ろうとしなくちゃ。でしょ?」

真剣な目で見つめられ、深く頷いた。



夫婦になるのに相手のことを何も知らないなんて、政略結婚だとしてもあり得ない。

よし!まずは会話から、だよね!



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