隣にいるのに遠い
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年齢なんて恋愛には関係ないとよく言われるが年の差があったら恋愛が出来ないというわけではないだけであり、ひとつのハードルであるのに違いはない。
いやそんなことぐらいいくら中学に入学したばかりの私にだって分かっていたはずだった
だってそのときの彼はもう21で年が8つも離れていたのだから
小学校から私立の女子校、中高は一貫校でこれもまた女子校だった
だからそれはいくら歳が離れているとはいえ家族以外の初めて身近になる"異性"だった
執事と一口に言っても父の執事のような仕事の補助をするわけでもなく勉強を見てくれたりもした
中学生の私に対しても丁寧な言葉遣いで接してくれて決して子ども扱いしたり見下したりはしなかった
両親は仕事は忙しくあまり一緒にいられなかったから中学からは必然的に彼といることが多くなった
彼は私に関していろいろなことを知っているけれど私は彼のことをあまり詳しくは知らないというかほとんど何も知らない。
故に、惹かれた
最初は憧れとか興味とかそんな感情だった
何が好きなのか、休日どんな事をして過ごすのか、とか。
「柳生さんの趣味は何ですか?」
「趣味、ですか…
強いていうなら読書でしょうか。」
(あ、私と一緒だ…!)
そんな些細だけど共通点が嬉しくてよく柳生さんとは本の話をした
読書は元から好きだったけどそれ以来それまで以上にに本をよく読むようになった気がする
けど、やっぱり彼は執事でしかなくてそれ以上を望むことは出来ないし、そんなこと彼は望んでもいないのだろう
執事といえども休みの日くらいある。
執事は彼一人だったけれど他にメイドはいたし1日いなかったところでさして支障が出るわけではなかった
丁度私も彼が休みの日に友達と出かける約束をしていて地元のショッピングモールを訪れていた
雑貨屋や服屋を物色して一休みのために入ったスイーツ店でケーキを食べていたときのことだった
「あれ、あの人なまえの執事の人じゃないの?」
「え?………あ。」
柳生さん、だ…!ひとりじゃない。
隣には綺麗な女の人がいて腕を組んでいるから多分彼女なんだろう
───悔しいくらいにお似合い、だった。
なんて。柳生さんだって彼女くらいいたっておかしくないのに、むしろいないはずがないのに。
何で気付かなかったんだろ馬鹿みたい
「あれ違ったかな…
って、なまえ。どうかしたの?」
「え、あ。ううん!
よく見えなかったから…分かんなかったや」
友達の言葉で我に返り何事もなかったように笑う
ぎこちなくしか笑えなかったけど、でも友達は気付いていなかったようで心底安堵した
次の日、何も知らない彼はまたいつも通りに執事としての業務をこなす
学校に送ってくれるときの運転席と助手席。勉強を教えてくれるときの距離感。
失恋したことで初めて私は、彼に恋していたことに気付いたのだった
隣にいるのに遠い
(昨日と変わらない距離なのに、)
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