その日の夕焼けは、異様に朱い色だった。
私は、そんな夕焼けの中、家に向かって走っていた。
友人とアイスクリーム屋さんに寄り道したはいいが、ポケモンについて話し込んでしまったのだ。
あまり帰りが遅くなると、父に注意されてしまう。
私は、雪野 カナ。15歳の中学3年生である。好きなものは、アニメ漫画ゲーム、要するに二次元。あと、厨二病チックなものとBL。そう、腐女子である。
あと、そう、特徴と言えば、私はロシア人と日本人のハーフで、父親譲りの金髪を持っている。そして、遺伝子の異常により、生まれつきの虹彩異色症…要するにオッドアイである。
こんな特殊な見た目の所為で迫害を受けたりもしたが、優しい家族がいて、徐々に私を理解してくれる友人も増えてきて、なんだかんだで恵まれた環境で、幸せな生活を送っていた。
そう、この日までは。
「はあ、はあ、」
自宅であるマンションの階段を駆け上がり、部屋の前までダッシュ。そして、扉を開ける。ここまでは、いつものことだった。が。
「ただいまー」
シーン…
いつものように挨拶をした。ここで、私は異変に気付いた。
普段なら、母も父も、「おかえり」と返してくれるのだ。
なのに、返事がない。
というか、家の中から、全く物音がしない。
嫌な予感がする。
額を、冷や汗が伝う。
と、偶然フローリングの床に目をやった。するとそこには、泥でできた靴跡。
ざあっと、体が冷たくなる感覚がした。
慌てて靴を脱ぎ、リビングに駆け込む。しかし。
「父さん!かあさ、…ん…?!」
視界に飛び込んだのは、赤。
リビング中に広がる、血の、赤、赤、赤…。
そして、その真ん中に倒れているのは、間違いなく、私を産み育ててくれた人たちで。
「あ、…あ…」
本当にショックな時、人は悲鳴など上げれないと、この時初めて知った。
視界がくらくら歪む中、後ろから、カタリ、と物音がして、私は、反射的に振り向いてしまった。
そして、視界いっぱいに、知らない女の醜い笑顔が迫り、そして、脇腹に痛みを感じた。
そして、私は…。
*前 次#