- ナノ -




ミアレシティのポケモンセンターで、ジョーイさんに、「密猟者に追われていた」と説明し、ラティオスとラティアスのボールを渡すと、二匹はすぐに集中治療室に入れられた。

「…というわけだから、今日はポケセンに泊まるね、母さん」
『わかったわ。気をつけて。お使いは急ぎじゃないから明日でもいいしね』

私は、ホロキャスターで母さんに連絡を入れ、集中治療室の前に備えつけられたソファに腰掛けた。
ジョーイさん曰く、二匹とも命に別状はないらしいし、骨や内臓も無事らしいが、外傷が酷いらしい。
再び、あの名も知らぬトリッパーへの怒りが湧いてくる。しかし、すぐに気を取り直す。今はそれどころではないのだから。
「早く良くなって…。」
私は目を閉じて祈った。


「ん…。」
いつの間にか眠っていたらしい。私の体はソファに横になり、毛布がかけられていた。
「!!ラティオス、ラティアス!」
毛布を引っぺがし、私は集中治療室の窓に駆け寄る。するとそこには、ふよふよと浮いている二匹がいた。ジョーイさんはいない。私は思わず、集中治療室に足を踏み入れた。
「ラティオス、ラティアス…。」
二匹がこちらを向く。そして、
『トリッパーのお姉ちゃん!助けてくれてありがとう!』
ラティアスが口を開いた。厳密には、テレパシーで話しかけてきた。
『うむ、助かった。礼を言わせてくれ』
次はラティオスが話しかけてきた。
「当然のことをしただけよ。それより、怪我は平気?」
『もうバッチリだよ!お姉ちゃんが傷薬をかけてくれたから治りも早かったんだよ!』
ラティアスが笑顔で言う。
「なら良かった…。あ、運ぶためとはいえ、勝手にボールに入れたりしてごめんなさい。退院したら、ボールを壊して好きなところへ行っていいから」
私が謝ると、ラティアスは不思議そうな顔をした。
『なんで?私もう、お姉ちゃんのポケモンだよ?』
「え?」
『は?』
ラティオスと私の声がハモる。
『私ね、お姉ちゃんのこと気に入っちゃった!だから、お姉ちゃんの側にいたいの!あ、お兄ちゃんも一緒にね!ね、いいでしょ、お兄ちゃん、お姉ちゃん!』
『お、おい!それは流石に迷惑だろ!』
ラティオスが焦って叫ぶ。このラティアス、随分強引だな。
しかしどうしよう。この二匹は珍しいポケモンだから迂闊に外に出せないし、そもそも私は既にポケモンを六体所持している。
「ラティアス、あなたは珍しいポケモンだから、私の手持ちになるとあまり外に出られなくなるわよ?」
『それでもいい!私お姉ちゃんのポケモンになる!』
ラティアスが駄々を捏ねる。ラティオスはそんな妹を必死にたしなめている。
すると、ボールから私の手持ちたちが飛び出して来た。
『いいんじゃねーの?ここまで言うんならさ』
「フォルテ…」
『マスターなら一匹や二匹増えたって平気だよ…。』
『賑やかになるね!』
『私も、仲間にいれてあげていいと思う!』
みんなが騒ぎだす。私は折れた。
「じゃあラティアス…今からあなたは私の手持ちね。…ラティオス、あなたはどうする?」
大喜びするラティアスの隣でため息をつくラティオスに問いかける。ラティオスは疲れきった声で言う。
『妹が心配だから…ついていってもいいか』
「はい、じゃああなたも今日から仲間。」
『わーいわーい!お姉ちゃんの手持ち!あ、そうだ!私とお兄ちゃん、綺麗な石を持ってるの!手持ちになった記念に、あげるね!』



「んで、その綺麗な石がメガストーンだったわけか」
「そう。だから、この二つのメガストーン…蒼輝(そうき)と紅姫(こうき)のメガストーンをアクセサリーに加工して欲しいんです、ギンさん」
「注文、承ったぜ。ところで、どうしてトリッパーは消えたのに二匹の傷は消えなかったんだ?ラティオス…蒼輝だったか」
『俺たち兄妹とミュウは友人でな、ミュウたちの道楽に参加はせずとも、というか俺たちの力では参加できないけど、とにかく知っていたんだ。だから、俺たちはトリッパーの現象の対象外なんだ』
「なるほど。」
「ミュウも迷惑なことするわね!」

まあそんなわけで、仲間が増えました。




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