- ナノ -




ギンさんとミュウに言われて店を出て、2時間が経った。
私は再び店に向かっていた。
なんか結局、2時間、7番道路の育て屋に見学と称して入り浸ってた気がする。だって旅した時にコボクタウンは一通り観光したし…。まあそんなことは今はどうでもいい。とりあえず、今は懐中時計が直っているかが重要なのだ。

「すみませーん、カナです!懐中時計取りに来たんですがー!」
相変わらず店には誰もいなかった。
程なくして、ギンさんがパタパタ足音を立てながら出てきた。ミュウも一緒だ。
ギンさんとミュウは、私の前に並んだ。なぜか後ろ手に何かを隠している。
「あの、時計は…」
「ほら」
ギンさんが時計を差し出した。私はそれを受け取ろうとして、
「…え?」
固まった。なぜなら、時計は様変わりしていたのだ。
傷ついた蓋は新しいものに変わっていた。蓋の彫刻は、確かに、以前のもののデザインを踏襲していたが、以前のものとは大きな違いがあった。

七色の小さな石が、埋め込まれていたのだ。

石はきらきらと、神秘的な輝きを湛えている。私はこれを、この石を、知っている。これは、まさか…。
「…キーストーン?」
『ぴんぽーん!』
ミュウが囃し立てるように言う。
メガ進化に必要な石の一つ。キーストーン。それが私の時計に取り付けられている。
私は顔を上げて二人を見た。
『そのキーストーンは、ボクからのプレゼントだよ。蓋自体は、ボクとギンで作ったんだけどね。この店は、キーストーンやメガストーンをアクセサリーに加工しているんだ。いつもボクを楽しませてくれる、ほんのお礼さ。』
「まあ、メガウォッチってとこだな。」
「メガウォッチ…。」
二人の笑顔。私は目頭が熱くなるのを感じた。
『あ、勝手にリニューアルなんかしちゃって、もしかしたら嫌だったかな?!嫌だったら、今からでもギンに…!』
「いいえ、嫌なんかじゃないわ。」
ミュウの真心と、付き合ってくれたギンさんの優しさが詰まった時計は、今までよりずっと素敵に見えた。
「ミュウ、ギンさん、ありがとう」
時計を握りしめ、私は深々と頭を下げた。
『良かったー!気に入ってもらえたー!』
ミュウはほっとしている。そんなミュウの姿が笑えたが、私は一番大事な事を思い出した。
「あ、そうだ、お代…」
「今回はいいよ。ミュウの発案だから、ミュウから貰う」
ギンさんが私の言葉を遮って言う。
「ミュウ、あんたお金持ってるの?」
『ボクにかかれば、用意することぐらい簡単さ。』
そんな話をしていると、ギンさんが話しかけてきた。
「そういやあんた、メガ進化するポケモン持ってるのか?」
「あっ」




…まあとにかく、これが私がメガウォッチを持つことになった経緯である。



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