- ナノ -




『そういえば、』
今日も今日とて私の部屋に遊びに来ていたミュウが、おもむろに口を開いた。
「…なによ」
『君、確か宝物がある設定だったよね』
「設定とか言うのやめなさい」
相変わらずメタ発言の減らない奴だ。私はすぐさまツッコミを入れた。しかし、ミュウの言う通り、私には大切な宝物がある。仕方ないので、ポケットから「それ」を取り出した。
『これは…懐中時計かい?金色で綺麗だね』
「ええ。父さんと母さんに買ってもらったものよ」
『へえ…君の行動原理って大体が親御さんだよね』
ミュウが呆れたように言うが、親と物を大切にすることのなにがいけないのか。
そういう意味合いを込めてミュウを視線を送った時、ミュウが声を上げた。
『あれ?この時計、蓋に傷がついてるじゃないか』
そう言って、ミュウは短い手で懐中時計に触れ、労わるように蓋を撫でた。確かに、この懐中時計には、大きな傷がある。その理由は…。
「こないだ、また逆ハー狙いのトリッパーに絡まれて、相手の手持ちの攻撃が掠めたのよ。そのトリッパーはボコボコにして消滅させたし、父さんと母さんも、『カナが無事なら良かった』って言ってくれたけど…。」
『そりゃあ災難だったねえ。』
ミュウの言葉に黙って頷く。あのトリッパー絶対許さない。もっと痛めつけてやれば良かったか。
『カナ、顔が怖くなってるよ。』
ミュウの言葉で私は我に帰った。そうだ、済んだことをいつまでもうじうじ考えていてはいけない。
「念のため、時計屋に持ってって直せないか…同じ蓋を作って貰えないか聞こうと思ってたのよ。」
『あー、でもこれ、向こうの世界の物だし無理じゃない?』
「念のためよ」
例え傷が直らなくても、大切な懐中時計なことには変わりないが、直せるのなら直したい。そんな風に考えていれと、ミュウが突然大声を上げた。
『そうだ!』
「?!」
『いいこと思いついたんだ!』
ミュウは瞳をきらきらさせながら、長い尻尾を私の腕に巻きつけた。
『とりあえず、ボクについてきて!』
そう言ってぐいぐい進もうとするミュウに従って、私は部屋を出たのだった。



『今回はもうちょっとだけ続くよ!』
「誰に向かって言ってんのよ」



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