- ナノ -




私の容姿は呪われていると、誰かが言ったことがある。

悔しいけれど、私もそれには同感だ。この容姿のおかげで、ろくな目に遭わないのだから。

「私は、呪われてるなんて思わないけどなあ」
マサコちゃんが苦笑いで言う。
今日はカロス滞在最終日ということで、もう一度私に会いに来てくれたのだ。
「少なくとも私は、カナちゃんの金髪もオッドアイも、綺麗だと思うよ」
「…ありがとう」
笑顔のマサコちゃんに、私も微笑む。マサコちゃんは本当に優しい。
その時、どこからともなく甲高い声が聞こえた。
「ならさあ、なんで容姿を変えなかったのさ」
振り向くと、そこにはミュウがいた。
「ミュウ…」
「やあ、カナ。あと、隣の君は、ギラティナの管轄の子だね?初めまして!」
「初めまして、ミュウ。私はマサコ」
マサコちゃんと笑顔で挨拶を済ませ、ミュウは私に向き直る。
「で、本題だけど、その容姿が呪われてると思うなら、どうして容姿変更のサービスを使わなかったの?」
「そういや、そうだよね。カナちゃん、何か理由があるの?」
二人が私を見つめる。まあ、いつか事情を知る誰かに訊かれるとは思っていたから、別に焦ることなく、私は答えた。
「呪われてるといえど、この容姿は、父さんと母さんからもらったものだから、そう簡単に捨てられないわよ。こっちに連れてきた以上、いきなり容姿変わったら二人ともびっくりしちゃうし」
きっぱりと言った私に、ミュウとマサコちゃんはきょとんとしていたが、やがて苦笑いした。
「なんというか、その…」
「カナちゃんのとこの家族は、本当に仲がいいね…。」
「ええ。」
家族が仲良しで悪いことなどない。私にとって父さんや母さんは誇りでもあるし、そんな人からもらったものを捨てられないのは、当たり前だ。あと、容姿だけ取り繕って調子に乗る逆ハー狙いのようにはなりたくなかった、というのもある。
ドヤ顔で語った私に、マサコちゃんが話しかける。
「じゃあ、この世界に来る時に親からもらった容姿を捨てた私を、カナちゃんは軽蔑するかな?」
確かに、マサコちゃんはこの世界に来る時に容姿を変えた。しかし、それとこれとは話が別だ。
「何言ってるのよ。容姿が変わっても、マサコちゃんはマサコちゃんのままでいるじゃない。だから私、マサコちゃんのことは大好きよ。」
そう言うと、マサコちゃんはまたきょとんとした顔をしたが、すぐに可憐な笑顔で、「ありがとう」と言った。
「今思ったんだけど、君らも大概仲良いよね」
と、空気になっていたミュウが突っ込んだ。
私たちは、顔を見合わせて笑いあった。



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