- ナノ -




オッスオラ雪野カナ。
…キャラじゃないな。
さて、こんな始まり方ではあるが、今日は私の周りの人を紹介しようと思う。手持ち?彼らはまた今度ね。何も、前回みたいに訳の分からない連中ばっかりホイホイしているわけではない。うん、多分…。




「カナちゃん、ちょっといいかしら」
「何?母さん」
そうやって私に話しかけてきたのは、私の母さんである。名は、雪野小百合。
身内の贔屓目なしに見ても、若くて美人である。しかも優しい、自慢の母さんだ。まあ、ちょっと天然なところもあるけど、それについて今は語るまい。
「パパにお弁当を渡し忘れちゃったの。届けてきてくれないかしら?」
ほらね。天然だ。天然ボケだ。
「いいわよ、行ってくるわ」
了承して、私は母さんからバスケットを受け取り、アパートを出た。向かうは父さんの職場。といっても、お隣なんだけど。え?どこで働いてるのかって?それは…
「こんにちは、プラターヌ博士。父さんいますか?」
「カナちゃんこんにちは、お父さんは向こうだよ」
そう、天下のプラターヌ研究所だ。

実は、トリップした翌日、いきなり隣のアパートに現れた私たち一家を不審に思ったプラターヌ博士が我が家に突撃してきて、トリップの経緯を洗いざらい白状させられたのだ。さすがにミュウの道楽だということは伏せたが。そしたら、お人好しな博士は、父さんを研究所の職員にスカウトし、私たち一家を気にかけてくれるようになったのだ。父さんはもともと研究職だから、ポケモンの研究も楽しそうだし、仕事が見つかり私たち一家も安泰なので、私たちはプラターヌ博士に足を向けて寝られないのである。
閑話休題。
「父さん、お弁当忘れてるよ」
「おお、カナか。ありがとうな」
そして、我が家の大黒柱、父さんである。名は、アレクサンドル・ピョートロヴィチ・雪野。何故母さんの苗字を名乗るかというと、ロシアには、夫婦二人ともに、お互い名乗る苗字を選ぶ権利があるからである。そんな父さんは、見た目はナイスなミドルで、性格は母さんに比べ厳しい。だけど、いつも正しく導いてくれるから、尊敬しているのだ。
「カナ、どこへ行くんだ?」
「今日はこのあと、ミアレを散歩するわ」
「気をつけてな」
「はい」
と、何の変哲もない言葉を交わして研究所を出た私は、ミアレシティをふらふらする。すると、
「カナさん!」
「カナお姉ちゃん!」
幼い兄妹が寄ってきた。そう、ミアレジムリーダーシトロン君と、その妹ユリーカちゃんである。彼らは、トリップして、割とすぐな時期に仲良くなった友人だ。
「こんにちは、シトロン君、ユリーカちゃん」
「こんにちは!」
元気なユリーカちゃんの挨拶。これはまたカフェにでも引っ張られそうだ。

一度殺された身ながら、友達がいて、パトロンが支えてくれて、家族と何気ない会話ができる。
それはすごく幸せなことだと思う。

私は常に、この奇跡に感謝するよう心掛けている。



*前 次#