- ナノ -




私の様なド派手な容姿は、人目を引く。他人に一度見られれば忘れられない。それは便利なのだが、同時に、嫉妬やら異端への拒絶やら悪意やら、変なモノも呼び寄せてしまうのだ。


それは、こちらの世界でも同じなようで。







「この悪女!まだ小さいシトロン君をたぶらかすなんて!」

そうやって私に突っかかってきた、ピンクの髪の女の子。ちなみに、こういう事は今日が初めてではない。私は溜め息を零した。ユリーカちゃんにお茶に誘われ、ジムでシトロン兄妹とティータイムを楽しんだ帰りにこれである。

『まだ小さいシトロン君を〜って、あいつもシトロンをたぶらかす気満々な目してるよなあ、ブーメランだな』

私の横で呆れているのは、パートナーである、色違いクレッフィのフォルテ。このフォルテをギラギラした目で見るのも不愉快だ、この女。

あ、ちなみに、ミュウがくれた最後の特典はポケモンとの会話能力だった。
なかな便利な力だ。

「あー、一応言っておくけど、私とシトロン君はただの友達よ。なんで私を悪女だと思ったのよ。根拠は?」
「根拠…って、そんなド派手な容姿、逆ハー狙いに他ならないじゃない!オッドアイとか痛すぎるわよ!」

はい、ブーメラン。オマエモナーって奴である。
なぜなら、この女の子、キッツイピンクの髪をツインテールにして、丸い瞳は海の様な青。目に優しくない配色の、コテコテ逆ハー狙いなのだ。
私は思わず鼻で笑ってしまった。
「何笑ってるのよ!アンタなんて、このマカロンちゃんがコテンパンにしてやるんだから!そのクレッフィだって、無理やり従わせてて全然言うこと聞かないんでしょ!わかってるんだから!」
うわあ、とんだ妄想女だ。
「私はこの子の意思を無視したことなどないわ」
『そうそう。ヤワなトレーナーならとっくに見放してるよ』
「クレッフィ!今助けてあげるから!グラエナ!行きなさい!」
女の子は私たちの話など耳に入っていないのか、グラエナを繰り出してきた。

こいつ、馬鹿じゃないだろうか。グラエナとクレッフィでは相性はクレッフィの方に分があるし、それにこんな街中でバトル始めようとするなよ。人が集まってきたじゃない。
ああ面倒臭い。さっさと片付けよう。
「グラエナ!あの悪女に噛み付く!」
「フォルテ、じゃれつく」
フォルテの方が早かった。グラエナはあまり育てられていないのか、一撃で倒れた。

「立ちなさいよ!この役立たず!」
すると、発狂した女の子は叫びながらグラエナを蹴り始めた。私は放置して歩き出す。
『いいのか?』
「いいわよ。関係ないし、あれだけ人がいれば、そのうち通報されるわ」
フォルテの問いに答え、ギャラリーをすり抜けてその場から離れる。


あーあ、楽しい気分が台無しだ。



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