- ナノ -




「みんな、さようなら!」
「さようなら!」
たんにんのせんせいにあいさつをする。きょうのようちえんはおわりだ。
きょうしつをでて、えんのうんどうじょうをみまわす。ともだちが、じぶんのおかあさんにだきついているのがみえた。ちょっとうらやましい。
とうさまもかあさまも、おしごとでいそがしいから、わたしをむかえにこれない。だから、むかえにくるのは、かわりのひとだ。
「シルヴィア!」
なまえをよばれてふりむくと、かあさまがやとったという、「ホームヘルパー」のヴリトラおねえちゃんがてをふっていた。
「ヴリトラおねえちゃん!」
「帰ろっか!あ、今日は習い事はなかったよね!」
「はい」
ヴリトラおねえちゃんとてをつなぎ、ともだちにさよならをいってようちえんをでる。ヴリトラおねえちゃんはゆっくりあるいてくれるから、わたしもつかれない。

ヴリトラおねえちゃんは、「りゅうじんぞく」だ。おねえさんのファフニールさんといっしょにくらしていて、しごとがいそがしいとうさまやかあさまのかわりに、いえのことやわたしのめんどうをみてくれている。あと、ヴリトラおねえちゃんはりゅうじんぞくにあるはずのつばさとしっぽがない。まえに、どうしてかきいたら、かなしそうなかおをしていたから、きいちゃいけないことだったみたい。
「シルヴィア、今日は幼稚園で何をしたの?」
「おにごっことかくれんぼと、おえかきをしました!」
「何を描いたの?」
「とうさまとかあさまです!」
「シルヴィアは家族のことが本当に好きだね!」
「ヴリトラおねえちゃんやファフニールさんのこともすきです!」
「ふふ、ありがとう!」
ヴリトラおねえちゃんは、いつもやさしくはなしをきいてくれる。とうさまやかあさまとはちがうあたたかさ。
そういえば、ムルねえといっしょにいるときも、こんなきもちになる。
もしかして、「きょうだい」といっしょにいるときのきもちは、こんなのなんだろうか。
「ヴリトラおねえちゃん」
「何?」
「ヴリトラおねえちゃんは、ファフニールさんといっしょにいるとき、あったかいきもちになりますか?」
「うん!お姉ちゃんは大事な家族だからね!」
「わたしも、ヴリトラおねえちゃんといると、あったかいきもちになります」
そういうと、ヴリトラおねえちゃんはおどろいたかおをしたけど、すぐににっこりわらった。


いえについて、おやつのプリンをいっしょにたべたあと、ヴリトラおねえちゃんはいそがしそうにうごきまわる。
いえのそうじをしたり、わたしにえほんをよんでくれたり。わたしがならいごとのひは、つれていったりしてくれる。きょうはならいごとがないので、まだひまなほうだ。
「シルヴィア、絵本読み終わったらドリルやろうか!」
でもヴリトラおねえちゃんは、やることをみつけてはたらく。とうさまもかあさまも、そんなヴリトラおねえちゃんをしんらいしている。
だからわたしも、とうさまやかあさまにしんらいされるようにがんばる。
まいつきとどく「つうしんきょういく」のドリルをひらき、えんぴつをてにとった。


ガチャ。
ドアのおとでわれにかえる。ヴリトラおねえちゃんは、となりのせきでわたしをみていたみたいだが、たちあがった。わたしもいすからおりて、ふたりでげんかんへむかう。そこにいたのは。
「とうさま、かあさま!おかえりなさい!」
「ただいま」
「ただいま帰りました。シルヴィア、いい子にしていましたか?」
とうさまとかあさまが、やさしくわらっていた。
「二人一緒に帰ってくるなんて、珍しいね!あ、あと、私の分までプリン用意してくれてありがとう!」
ヴリトラおねえちゃんがあたまをさげる。かあさまはわらっていう。
「いえいえ、ヴリトラさんには世話になってますから。感謝しています。シルヴィアは、今日はどうでした?」
「いい子で勉強してたよ。」
「そうですか。」
かあさまは、わたしのあたまをなでてくれた。


「ヴリトラさん、お夕飯、食べて行きます?」
「いつも世話になってるからな、食ってけよ」
とうさまとかあさまをむかえて、かえりじたくをはじめたヴリトラおねえちゃんに、とうさまとかあさまが声をかける。
ヴリトラおねえちゃんとばんごはんがたべられるのかな。たのしみ!
「ごめん、遠慮しとくよ。お姉ちゃん、待ってるし」
「ファフニールさんもよびましょう!」
「でも、」
「いいじゃないですか、たまには。」
かあさまといっしょにさそうと、ヴリトラおねえちゃんはおれた。
「じゃあ、お姉ちゃん読んでみるね。」
そういって、ヴリトラおねえちゃんはけいたいでんわをとりだす。
きょうはたのしいばんごはんになりそうだな。



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