- ナノ -

白状


「え、えーっと、その……」
ダイゴさんはにこにことこちらを見ている。知られちゃいけないことだったのに!私のバカ!
……しかし、ダイゴさんは、「君も」と言った。もしかしたら。
そんなことを考えているうちに、ダイゴさんがまた口を開いた。
「君も、異世界から来た人間じゃないのかい?」
……目眩がする。なんでそんなことまで知ってるんだ。いや、理由は大体察せられる。
もう洗いざらい白状してしまおう。逃げられると思えないし。
アブソルは、また唸り声を上げていた。



立ち話もなんだからと、ダイゴさんは私をその場に座らせた。ダイゴさんも座る。上等なスーツでこんなとこ座るなよ汚れるから!罪悪感半端ないから!
心の中で叫びながら、私は口を開いた。
「……どうして、私がポケモンと話せたり、異世界から来たことを察することができたんですか? ありえないでしょ、普通……」
「確かに、にわかには信じられないことだ。でも、君と同じように、異世界から来たと言い、ポケモンと話すことができる子がいるんだ」
「はぁ……その子は、ディアナと名乗ってませんでしたか?」
「えっ……その通り、ディアナと言う女の子だけど……知り合いかい?」
やっぱり、あのバカ神たちのお気に入りだったあの子だ。異世界から来たって馬鹿正直に言ったのか。よく痛い子扱いされなかったな。私なら絶対隠そうとする。
でも、ダイゴさんが私の事情を知ってるなら話は早い。
「……彼女が、ディアナさんがなんと説明したかは知りません。だけど、私は、彼女に巻き込まれて、無理矢理この世界に連れてこられたんです。」
「巻き込まれた、とは?」
ダイゴさんは、また訝しげな顔をした。私は続ける。
「シンオウ地方で信仰される神、ディアルガとパルキアっているじゃないですか。奴らは、ディアナさんを気に入って、こちらの世界に連れてきたんです。ちょうど彼女の近くにいた私も、それに巻き込まれました。」
「それが本当なら……君は被害者じゃないか! ディアナちゃんは、君を巻き込んだことを知っているのかい?」
「いえ、知らないと思います。彼女、私に目もくれなかったので」
ダイゴさんは、悲しそうな顔で私を見た。
「……ディアナちゃんは、ディアルガとパルキアに導かれてこの世界に来たと言っていた。とてもロマンチックだと思ったが……被害者がいるなんて……」
導かれて、か……。彼女は多分、ディアルガとパルキアに優遇され、恵まれた生活を送るんだろう。ポケモン世界に行けることを喜んでいた彼女は、元いた世界に未練はないのだろうか。
私が考えこんでいると、ダイゴさんがこちらを見た。
「……と、言うことは、君も行く宛がないんだろう? これから、どうしたい?」



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