巫女戦士が行く!
- ナノ -

三日月さんと出会った翌朝。私はいつものように目覚まし時計の音で目覚め、着替えてリビングへと向かった。
「お父さん、お母さん、おはよ…」
「春音!ちょっと来て!これ見て!」
私の挨拶は、お母さんの慌てたような声に掻き消された。両親は、揃ってテレビにかじりついている。
「えー、何…って、」
テレビの前に行き、画面を見て、私は驚いた。そこに映っていたのは、見覚えのある景色。
〈─────〇〇町の廃ビルで起こった爆発事故についてのニュースです。本日未明、〇〇町にある廃ビルが、なんらかの爆発物により半壊しました。近隣の住民は─────…〉
テレビから聞こえてくるのは、私の住むこの町の名前で、映っているのは、近所にある廃ビルだった。小さい頃、清光や安定と忍び込んで遊んだ記憶が蘇る。そんな思い出の廃ビルは、鉄骨が剥き出しの無残な姿になっていた。
「物騒ねえ…」
お母さんが不安そうに呟く。
「春音も、変なことに巻き込まれないように気をつけるんだぞ」
お父さんは、難しい顔をして私に言った。自分の住む町でこんなことが起きるなんて。ちょっと怖い。そんな私の不安を余所に、テレビは別の事件に切り替わってしまった。
「早いとこ原因がわかるといいね…」
両親と一緒にテレビから離れて、席について朝ごはんを食べ始める。そして、なんとなく嫌な空気の中、私は家を出たのだった。

「春音さん、おはよう」
「おはようございます、石切丸さん」
不穏なニュースがあろうと、日課はやめられない。私は今日も三条神社に参拝に来た。
「石切丸さん、朝のニュース見ました。廃ビルの爆発事故…」
そう言うと、石切丸さんは苦い顔をした。
「あぁ。怪我人とかは出なかったみたいだから良かったけど、不安になるよね。」
石切丸さんの固い声。皆不安なのは同じようだ。
「春音さんも、変なことに巻き込まれないように、気をつけてね。」
「父にも言われました、それ」
私が答えると、石切丸さんは、不安を振り払うようにぎこちなく笑った。

「あ、春音!」
「春音ちゃん!」
「二人ともおはよう。」
いつもの交差点の、「止まれ」の標識の下で、清光と安定が待っていた。
「ねえ、ニュース見た?あの廃ビルの爆発事故!」
清光が興奮気味に話しかけてくる。私は頷く。
「あんなとこ、爆発物なんてあったっけ?」
安定はあまり事件に関心がないのか、のんびりした口調で言う。
「バーカ、誰かが爆発物を持ち込んだって可能性もあるだろ?」
「誰が?何のために?」
「それがわからないから皆怖がってるんじゃん!」
ぎゃいぎゃいと騒ぎながら歩き出す二人と並んで歩く。石切丸さんも、清光も、両親も、皆が不安げな表情を浮かべている。

結局、クラスは爆発事故の話でもちきり、長谷部先生からも、事故の話と注意喚起があった。
皆が皆、不安がっている。なんか嫌だな、この空気。

この時、既に運命の歯車が回り始めていたことを、私は知る由もなかった。