- ナノ -




神様のお話


「ん…」



目を開けると、広がる青空。

起き上がってみると、そこは地平線まで続く草原だった。


春の日のような暖かい日差しで、草原はきらきら輝いているように見えた。




ていうか、どこだよここ。



確か私は部屋でゲームしてて…で、ゴヨウさんの部屋にゴヨウさんがいなかった…で、DSが光って…。


「どういうことだよ…」
『まあ、誰でもそう思うよね。』
「誰!?」


いきなり背後から、DSが光ったときにした優しい声が聞こえ、私は振り向いて、


固まった。


『やあ、はじめまして、大道 豊さん。』
「え、え…!!」


だって目の前にいたのは…


「どうして、アルセウスが…!!」


アルセウスだったからだ。え、なにこれ夢?ちょっとほっぺたつねって…痛い!これ現実?
ちなみに三輪さんボイスではない。優しくてかっこいい声だ。


『そうだよ。私が全ての父、アルセウスだ。私が君を、ここに呼んだのさ。』


アルセウスの優しい声は、いくらか、混乱していた私の気持ちを落ち着かせた。

私は、深呼吸してアルセウスに質問した。

「ここは、どこなんですか?」
『ここは、君たちの世界と我が世界の狭間に、私が作り出した空間さ。』

え、なにその夢小説みたいな設定。我らの世界ってどういうこった。
しかしまあ、聞いた以上私もその言葉を受け止めた。
まあ夢でも現実でもこういう状況は面白いし。ノってやる!

「つまり、私たちから見た『ポケモンの世界』はパラレルワールドとして実在するんですね?」
『呑み込みが早くて助かるよ。君のいうとおり、君たちの世界と我らの世界はパラレルワールドだ。あと、敬語はいらないよ』

うおお、なんか興奮してきた。アルセウス紳士的だな。

「え、と、じゃあ、なんで私をここに呼んだの?」

すると、アルセウスは一瞬黙り込んで、まっすぐ私の方を見た。


『そのことなんだが、話せば長くなる。それでも、付き合ってくれるかい?』

私は頷く。


「そのために私を呼んだんでしょ。なら最後まで聞くよ。私に出来ることはする。」
『ありがとう、豊さん。では、話そうか。』
「あ、さん付けいらない」


そしてアルセウスは話し始めた。

『君は、ディアルガとパルキアを知っているね?』
「あ、うん。」
『実は彼らが…まあ、私の管理不行き届きなんだが、派手に喧嘩をしたらしくてね…』
「はあ」


なにやってんだあいつら。仮にも神様だろ。あ、でも映画でも喧嘩してたや。


『その時に、時空の歪みができてしまって、君たちの世界から『ある人』が飛ばされてきてしまったんだ。君たちの言う、トリップ、だね。』
「トリップ、はあ」


そいつ羨ましいなおい。でもアルセウスの様子からして、それはあってはならないことなんだろうな。


『それだけなら良かったんだ。でも、飛ばされてきた人はこちらに来た拍子に、『あるこちらの世界の住人』の『存在』を奪ってしまったんだ。』
「は?存在?」
『言うなれば、『成り代わり』、だね。その住人は最初からいないことになって、その代わりにこちらに来た人が立場を乗っ取ってしまった。』
「ええー…。」


成り代わり、ねえ。何本かそういう話読んだことあるな。


『そして、その『存在を奪われた人』は、シンオウの四天王、ゴヨウだ。』


え、今、なんと。


「ゴヨウさんが…!?」
『ああ、ゴヨウだ。だから、ゲームでゴヨウがいるはずの場所に別人がいたんだ。』
「なるほど…って、」



なるほどじゃねえええええええ!



「ええー!!ちょ、ま、じゃ、ゴヨウさんは!?」
『それが本題なんだよ』


するとアルセウスの前に、紫色の光の玉が現れた。


[目次]