- ナノ -



居候は復讐者


ギラティナによって送り込まれてきた、生贄トリップの被害者にして復讐者の卵は、ミズホ(瑞穂)という名前だった。
ギラティナがある程度の事情説明と意思確認をしてくれているので、私たちは、ベッドに転送されてぽかんとしているミズホちゃんに自分たちの役目を説明する。そしてお互い落ち着いたところで、共同生活がスタートする。






『マサコ〜起きて〜』
子供のような高い声で、私の意識は浮上した。ぱちりと目を開けると、ジラーチのポラリスくんがふわふわと部屋を飛び回っていた。何故ジラーチなんて珍しいポケモンが手持ちにいるかは、また別の機会に話すとしよう。
「…おはよう、ポラリスくん。珍しいね。ポラリスくんが起こしてくれるなんて」
ポラリスくんがふわりとベッドに着地した。撫でてやると、嬉しそうに目を細める。うーん、可愛い。しかし、何故ポラリスくんがわざわざ起こしに来たのか。いつもなら私が自分で起きるか、ジョーカーくんが起こしに来るのに。
『ジョーカーとノーラは、キッチンでミズホとお料理対決してるよ』
「またぁ?」
そう、ミズホちゃんは、復讐のために、私たちが教えるポケモン世界の常識や復讐のイロハについての勉強に必死について来る真面目さんだった。そしてそんな真面目なミズホちゃん、よく働く子でもあったのだ。「お世話になりっぱなしじゃいけない」なんて言って、家事をやりだしたのだ。
私としては非常にありがたいんだけど、それに不満があったのは、もともと家事当番を引き受けてくれていたノーラちゃんとジョーカーくんだ。「新入りに仕事を奪われてたまるか!」とか言って、競って家事をやっている。おかげで家中ピカピカだしご飯は連日の(一方的な)料理対決で豪華になった。少し太った気がする。私はミズホちゃんの教師役しかやることがない。少し寂しい。
私はため息をついて、ベッドから降りて着替え始めるのであった。







「ミズホちゃん、復讐対象の居場所がわかったの?」
「はい。」
二人+一体の料理対決のおかげで豪華になった朝食を食べながら、ミズホちゃんは皆に話を振った。ギラティナが昨晩、情報を寄越したらしい。
「マサコさん、ノーラさん…私を殺した奴は、カロス地方にいるらしいです。」
「カロス地方!?」
その地方の名前を聞いた途端、私は歓喜した。何故なら、カロス地方には…。
「カロス地方!カロス地方に行けるんだ!それなら、久しぶりにカナちゃんと会えるんだね!」
私の古くから、詳しく言えばトリップ前からの友人、カナちゃんがいるからである。
「え、あの、カナちゃん、とは…?」
「ああ、お師匠様のご友人の方ですよ。」
戸惑うミズホちゃんに、ノーラちゃんが説明する。私は喜びで心がいっぱいである。カナちゃんに会ったら何を話そう。そんな風に考えていた時だった。
『マサコ!今回カロスへはミズホ様の護衛のためについていくんですよ!仕事の前から遊びの事を考えていてどうするんです!』
ジョーカーくんに叱られた。仕方ない。今は仕事の話なんだから、カナちゃんのことを考えた私が悪い。反省する。
では、気を取り直して。
「では、ミズホちゃん、ノーラちゃん、ジョーカーくん。あとしばらくの教育期間を終えたら、カロスに行きます!皆、もうしばらく頑張ろう!」
「おー!!」


こうして私たちは、お互いすべきことのために動きだしたのだった。