- ナノ -



パチ…パチ…



どこかで火を焚く音がして、意識が浮上した。
ゆっくりと目を開けると、木目の天井が見えた。また、自分はベッドに寝かされていることにも気づいた。柔らかな布団が気持ちいい。
身体を起こして、辺りを見回す。木造の部屋は、最低限の家具しか置かれていないシンプルな部屋だった。


ていうか、どこだよここ。



俺は確か、車に轢かれて死んだ筈だ。いや、もしかして助かったのか?それともここが天国というやつなのか。
左胸に手を当ててみると、とくとくと心臓の動く感覚が伝わってきた。俺は生きてる。
しかし、だ。生きてるにしても、どうしてこんな木造の部屋にいるんだ。病院の一室とかならまだ納得できたけど、ここは明らかに病院じゃない。誰がここに連れてきたんだ。
と、俺はここにきてようやく重要なことに気づいた。
車に轢かれた時の傷が、綺麗さっぱり無くなっているのだ。しかもなんか明らかに日本のものではない民族衣装みたいな服を着せられている。
「どうなってんだよ…」
思わず言葉が漏れる。考えても考えても答えは出ない。もしかしてこれは夢か?頬をつねってみる。痛い。ていうか頬をつねるとか漫画のキャラかよ。
そんなことをやっていると、部屋の外からパタパタと足音が聞こえてきた。思わず身構える。やがて、部屋のドアがバタンと開いた。
そして入ってきた人物と目が合って、俺は今度は固まった。
「あ、目が覚めたんですね!良かったー!」


そこには、俺は良く見知っている、しかしいる筈のない人物が立っていたからだ。

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